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かの者、警戒するに能わず

絶対強者、という存在は無条件で恐怖を呼び起こす。
かく言う私も、真竜の端くれではあるので……人間族を初めとする者たちからは基本恐れられる側の存在ではあるのだ。一応は。

「先生は普段どうやって本を手に入れてるんでしょうか?」

日向ぼっこがてら、草原に同行した助手であるところのワトリア君の質問を受け、私、シャール・ローグスは陽を溜め込んだ鱗を整列させてから本を閉じた。私の背で暖を取っていた鳩たちは、飛び立つことなくコロコロと休憩を続けている。

「もちろん、君たちから購入しているとも。その話をするためには、まず前段階として君たち人間族と私が対等の交流、少なくともフェアな交渉が成り立つ存在だと信じてもらわなくてはならない点について説明しないとね。ワトリア君はすっかり私に慣れてしまったから忘れがちだろう?
「あ、はい。普通の人はドラゴンにはホイホイ近づきませんよね、そういえば……」

言われてから思い出したのか、ワトリア君は栗色の髪を揺らして恥ずかしげに笑ってみせた。

「やることはシンプルでね。徹底して周囲に対し、無害な存在であるように振る舞うんだ。一貫して。例えばあの山の中腹に収まっている岩とかだが」
「アレですか?」
「そう、ちょっとバランスが崩れたら大地の力に従って転げ落ち、麓にあるものを押しつぶす危険性を秘めている。だが、ああやって山に食い込んで安定している内は人々はあれが無害な存在だって思い込む物なんだ」
「なるほど、先生も危険な素振り、見せたことなかったですね」
「私の身動ぎ一つでも、結構危険だから慣れるまで苦労したけれど、ね。そうそう、一向に信じてくれなくて、和解するに時間がかかった人もいる」
「えっと、どんな方だったんでしょうか」

ワトリア君の質問に、私は古い記憶を掘り起こしては、当時の懐かしさにあぎとの端をかすかに釣り上げて苦笑する。

「初代アルトワイス国王殿さ」
「はぁ、王様……王様ですか⁉」

【続かない】

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