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魂の灯 -84- #ppslgr

黒ぐろと東京湾を染め上げていた暗黒がやおら盛り上がって丘となり山となり、吠え猛った暗黒巨獣の身をも呑み込み、滞空する黄金武者の高さを乗り越えくらやみの巨塔へと変じた。

背信の暗黒塔はぐらぐらと煮えたぎるその身を歪め歪め、ゆがめて、暗黒巨獣のキグルミにドス黒い板金湾曲装甲のフルプレート鎧を打ち付けた様ないびつなる巨神へとその身をも作り変える。全身には赤黒く血脈がきらめき、薄皮向こうの筋肉がハム原木よりも雄々しく盛り上がった。

暗黒巨神は両腕を広げて天を仰ぎ、名状しがたい叫び声をあげ、宣言す。

「僕が浅はかだった」
「何ぃ?」
「認めるよ、君は、お前たちは、強い。余力を大きく温存して勝てる相手ではないと……認める」
「その現れが、コケ脅しのでくのぼうだってのか?」
「そうだ。僕はこれから全身全霊を持って東京メガフロートを潰す」
「……ッ!」

宣言と共に、暗黒邪神の巨体は一歩一歩大波をたてて東京メガフロートへと進んでいく。高さの増した波が、湾岸のビルを舐めた。

「マズイぞバティ、この狭い東京湾であのクソバカでかい図体任せに押し込まれたら防ぎきれん!」
「わかってる!」

合体黄金武者は暗黒巨神の頭上より、再度あの暗黒騎士を葬った金色の手刀を繰り出す!緩慢に身じろぎした巨神の肩口から恐るべき一撃が食い込み、その板金装甲に轍を刻むが……半ばにてその斬撃がとまった!

「……非力!」
「ッ!?ガァーッ!」

わずらわしい蚊を払う様に、動きの止まった黄金武者へ横合いから暗黒巨神の平手がしたたかに打ち込まれた!大気圏突破速度で吹き飛ぶ武者!湾岸ビルの中央に食い込み、歪んだ大穴を開けて一つ、二つ、三つビルを叩き折って四つ目でかろうじて止まった!

「アア、クソ……おれ、生きてる……?」
「私が、なんとかしたの。でもこの子はもう……」
「チクショウ、そういう事か」

一瞬の失神の後に意識を取り戻したバティの目に飛び込んだのは、コンソールを踊る赤いサインだ。
バックパック破断、左脚部断裂、左腕部粉砕。このダメージでバイタルエリアが健在なのは、ノアが生命保護に機体リソースを集中した為だとバティは理解した。

かろうじて健在なモニターには、他のソウルアバター達が巨神の侵攻を押し留めんと奮戦する姿があった、しかして分は悪い!

「行かなきゃ……!」
「落ち着け、バティ。このまま突っ込んだ所で今の俺達じゃ囮になれるかもあやしい所だ」
「だからって黙って見てろってのかよ!」
「人の話は最後まで聞け、手持ちの手札がブタならジョーカーをかっぱらってくればいい」
「いや理屈はわかるけどさ、そんな都合良く眠ってる切り札があるわけないじゃん!」
「あるわよ」
「へっ?」

ノアの一言に、バティは眼を丸くして振り返った。

「私の身体、あなたに貸してあげる」

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