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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第十一話 #DDDVM

「まず、実際の祭事の流れ、それから街の構造について調べてみよう」
「祭事の流れは神秘を呼び起こす儀礼、街の構造は陣を維持する為のものかもしれない、ということですね?」
「そうそう、ワトリア君は理解が早いね。素晴らしい」
「ありがとうございます♪」

心なしか、上機嫌な反応を返す彼女と共に、アラクトルム市最大の祭事について調査を続行する。幸いにも、ここにある書物の範囲で求めている情報についてはある程度把握することが出来た。

「まず、アラクトルム市の祭事は7日間の準備、前段期間を持つようです」
「前段期間中においては、街の飾り付け、水門の開閉や噴水による水量調整が行われ、より華やかに水の街を彩ると」
「はい、その間に街路の清掃と整理が行われ、本番日のパレードの為の下準備が行われるみたいですね」
「加えて、街の人々もその間は正午に祈りを捧げると……ここまでは神霊を対象にした祭事としてはそこまで異常な行為ではない。神霊の維持の為に祈祷するのも真っ当な話だが、問題はパレードの方か」

資料を読み進めると、パレードの規模と進路についての情報も確認することが出来た。当初は数十名ほどの小規模なパレードであった物は、街の発展と共に規模を増していき、今では一万人規模にも登る壮大な内容へと進化したとある。人員については、街の内外から信仰心篤い希望者がこぞって参加を表明するため、年々列の維持に苦労するようになってきた、という話もある。

「問題になるのは、進行順路なのだが……」
「ありましたよ!シャールさん!」
「ありがとう、どれどれ……」

パレードの進行順路については、祭事初期から祭神より厳密な指定があったとの記録が残されていた。その内容を街の構造と合わせて確認する。

「アラクトルム市その物の構造は、アルトワイス王都と同様、真円上の城壁に囲まれ、いくつかの区画に分割されている、と」
「こっちがパレードの順路、そしてこちらが市街地図です」
「うん、それでは君の眼鏡に2つを重ね合わせた図を表示してみよう」
「お願いします!」

眼鏡に映った像を一部を切り出して透過、重ね合わせる程度なら遠隔でも簡単に行える操作だ。一筆書きで描かれた進行順路は、まるで高度な魔法陣の様に複雑な図形を描き出した。中心には女神を祀る人口泉と神殿が存在しており、パレードは市街地外縁部から全区画を巡回して神殿にたどり着くルートを通っている。

「シャールさん、これではまるで……」
「そうだね、人間の操る魔法陣のようだ。もっとも魔術の起源は神霊の操る神秘の再現から来ているので、順序が逆になるけれど」
「竜族の魔術もですか?」
「竜族については、起源をやはり神秘の再現においているものの、竜族独自の発展を経由した、というのが適切かな」
「なるほど……話を戻しますと、やはり泉の女神が犯人なのでしょうか」
「焦らない焦らない、判断材料は集まってきたけどまだ確たる証拠には結びついていないからね」

そう、早とちりは良くない。物事を判断するためには情報が必要だ。今は判断材料を集めるための時間は十分にあるのだから。

【雷竜輪切り事件 第十一話 終わり 第十二話へと続く

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