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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第十話 #DDDVM

「とすると、結構絞られてきます?」
「ああ、期限としては長くても一ヶ月前まで。といっても、儀式の実行と結果に若干タイムラグを作れるとしても、精々一週間以内ではあるかな。さっきも言った通りに、信仰とは移ろいやすい物。祭事が終わった後には徐々に減衰していくんだ。それを考えると、機会は限られている」

彼女の手元で、ページが踊っていく。まず、索引から年月ごとの逆引きを開き、さらには直近の祭事をたどっていく。大小様々な祭り――小さな村の年に一度のお祭りから、街道に寄り添う縁日、そこから中規模の街の祝祭となって、条件に見合う祭事はあっさりと見つかった。

「シャールさん!これは如何でしょうか?」
「見せてくれたまえ。行われたのは、例年通りなら三日前。場所は国内随一の規模を誇る奉神都市アラクトルム……ここは確か、泉の神霊を奉じて発展した街だったはずだ」
「はい、近年では豊富な水源を生かした水車機関があちこちに設置されていて、観光地としても人気がある所です。しかし……こんなに栄えている所の神性がわざわざ竜に手を出すのでしょうか?」
「仮に、ここだとしたら逆の事が考えられる。この都市の縁起は、元々祀られている神霊の復讐のために発展したんだとしたら、どうだろうか。ワトリア君、今度はこの都市がある地域の歴史を探ってみよう」
「はいっ!」

『アルトワイス王国祭事目録』を脇に抱えたまま、今度は歴史書の列へと移っていく。歴史もまた、重要な知識であることには疑いの余地はないだろう。この図書館は歴史の重要性についてはきちんと理解しているらしく、国家の成り立ちだけでなく地方の歴史についても十全な品揃えを誇っている。

そして資料が充実している分、探すのにも時間がかかってしまう。山のような微に入り細に入り、村々に至るまで歴史を残している本棚の奥底。司書殿の協力もあって、その中からなんとか関連資料を探り出してもらうことに成功した。

「……結構分厚いですね」
「都市だけではなく、地方の歴史である以上はこの厚さにもなるだろう。まずは都市の起こりからたどってみようか」
「はい。ええと……かの都市の起こりは今からおよそ百年ほど前の事、元々は森の中にひっそりと存在していた泉が、森が焼き払われた事で露呈。その事により泉の神霊と人間族が邂逅した後は、神霊より水源の加護を賜り豊富な水を得た事で交易地の中継地点として発展が進んでいった……とのことです」
「ありがとう。ここまでは条件を満たしている。であれば、後は肝心要の殺害方法だ。こっちについてはある程度見立てがついているが、祭事の内容を私の推理と照らし合わせることでより確度が高まる」

ゴルオーンへの殺害方法は、非常に特殊な手段を採ったと言っていい。
そして、神霊がもたらしうる神秘、奇跡は数あれど、その多くは恵みをもたらす物だ。果たして、私の推測している神秘は当てはまっているだろうか。

【雷竜輪切り事件 第十話 終わり 第十一話へと続く

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