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マン・ハンティング・ウィズ・ポスト・アポカリプス 14

「エンジさん!目立った脆弱性の対策と非認証アクセスの拒絶設定終わりました!」
「いいぞ!次のフェーズだ!」

 ビルの屋上で滝の様な汗を拭おうともせずタイピングを続けるエンジとコーデリア。そして二人の後ろで手持ち無沙汰気味のシラセがベンチを持ってきて観戦モードとなる。

 決め手にかける二体の巨大人型兵器は共に打撃とプロレスワザの応酬によって装甲の大部分が毀損、フレームにもゆがみが生じつつあるがまだ戦闘能力そのものが失われた訳ではない。

「俺一人のリアルタイムアクセス制御だったから雑な動きだったが二人ならまた話は別だ!」
「つまり、私は何を制御操作すればいいですか!?」
「挙動操作だ!俺は機体を制御するための基礎処理を対応する!」

 息の合った連携でディーヴァへの制御タイピングを分担する二人。そんな二人を信頼しているのか水筒から適度に冷ましたお茶をついですするシラセ。

 エンジニア二人が操作を分担対応し始めるとディーヴァの挙動は見違えるほどに研ぎ澄まされた物へと変わっていく。ブディズム格闘術の構えはより攻撃的な物へと変わり、搭乗員が疲弊しモーションが煩雑になりつつあるビスマルクを圧倒し始める。

「上出来だ!このまま無力化するぞ!」
「エンジさんの事だから皆殺しだ!じゃないんですか!?」
「朝食作らせるくらいのノリでお前に殺戮の片棒はかつがせねぇよ!そんときゃ俺一人でやる!」

 意外な回答に一瞬だけタイピングの動きが止まるモノの、すぐに再開するコーデリア。

「大振りな一撃を狙ってきた所の隙をついて関節部分を狙え!重火器は見当たらないからそれで十分だ!」
「わかりました!」

 二人の意思疎通をつゆ知らずビスマルクは不安定な足取りで駆け出しながら指のいくつも欠けた拳を振り上げ、ディーヴァを殴りつけんと挑みかかる。コーデリアは既にカウンター挙動制御のプログラミングを打ち込み終えると、少女の想定した通りにディーヴァは左手で振り下ろされた拳を外側にいなし、流れるように右手でもって手刀をビスマルクの右肩関節部分へと打ち込む!

「な、ナンデストゥー!?」

 ビスマルクの中から令嬢らしき驚愕の声が響いてくる。スピーカーか何か搭載しているのだろうが、二人はかまうことなく連撃をディーヴァに繰り出させた。

 右肩を破壊されよろめくビスマルクに対し、ディーヴァはすり足めいた素早い踏み込みから前進の勢いを乗せた手刀で城塞ロボの左肩も破壊。破損したフレームでは両腕を支えきれずに破断、どちらの腕も大地へと崩落する。

「どうですか!?」
「ナイスだ!だがあのサイズじゃ動けるってだけで脅威だ!続けて脚部も完全に破壊しろ!」

 エンジの指摘の通り、ビスマルクは両腕が崩落してなお諦めずにディーヴァへと突貫してくる。巨大な物体の体当たりはそれだけで破滅的な破壊力を持つ。鈍重な敵機が衝突するよりもコーデリアの入力完了が早かった。

 ディーヴァはその巨体に似合わぬスムーズな動きで身をかがめ、達人めいた動きで恐るべき速度の回転足払いを放った。重量物を支えていた両脚は鋭い足払いの衝撃に耐えきれず断裂、両脚揃ってへし折られるとたまらずビスマルクの胴体である城塞部分は大地へと落下した。

 ビスマルクのスピーカーから外部へと漏れる多数の悲鳴。もっとも悲鳴が上がっているという事は搭乗員は生きているという事でもある、なにがしか優れた衝撃緩和機構を保持しているのだろう。

 勝負が決したのが明らかになると、仰向けになった城塞から憔悴しきった様子の令嬢が這い出て来て、よたつきながらも白旗を振った。

【続く】

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