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冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第三十六話 #DDDVM

上に乗る人数が三名が四名にふえた所で、私の飛翔能力にはいささかの影響も生じない。
鳥の飛び方と、虫の飛び方、それぞれの原理が異なるように、竜の飛翔は重さの影響をやすやすと受けるようなものではないからだ。
もっとも、個体によって異なるので飛べない竜もいれば、私から見ても奇妙な跳び方をする個体もいるのだが。

「うん、快適だね。実に良い。探偵殿は何を差し出せば僕の足になってくれるのかな?」
「お父上の思い出話の一つも語っていただければ、乗り合い馬車の代わり位は努めましょう。私にはそれが何よりの対価です」
「おっと、困ってしまうねそれは。こう、プライベートで守秘義務に触る内容が多いから……普段は自分の脚で歩くことにするよ」

二世殿の軽口に付き合いながら、澄み渡った青空を翔ぶ。
アルトワイス王国は、温暖な気候が育てた樹海が広がる国であり、また広大な草原からなる平野もまた存在する。
迷宮公の御在所は先に語った通り、峻険な山脈の中腹であり、そこから山の麓に向かってすそが広がるように森林の緑が広がってゆく。

「手がかりはあるんですか?」
「もちろん、でなければ君たちを寒い青空にただ浮かべただけになってしまう。ほら、ちょうど手がかりの一つが見えてきた」

濃い緑の陰影は、淡い薄緑へと移り変わり、地勢が平原へと切り替わったのが見て取れる。一面の草花に覆われた大地に忽然と突き出した大岩の姿、正確にはその上に描かれた証拠を私は捉えていた。

証拠の元へ羽ばたきを伴って下降すれば、私の姿を見慣れない野うさぎを始めとする平野の生き物たちがたなびく草の合間から飛びい出ては、一目散に駆け出していった。各々のペースで私の背より降りる一堂。

「これは……魔法陣?でも、どうしてこんな所に」
「この魔法陣がここにある理由は至ってシンプルでね、これは中継地点なんだ」
「中継……ですか?」
「うん、おそらく、二つの理由で犯人は迷宮公の近くまで来てから犯行を行うことは出来なかったんだ。犯人が持っていった遺物を覚えているかい?」
「『甘竜ラ・クラリカの黄金酒』です」

答えながらメモを確認するワトリア君に対し、うなずいて見せる。

「そう、あの黄金酒は俗に、人間族に対する万能薬として働くと伝承されている。であれば、考えられる理由として……犯人は遠出が出来なかったんだ。病が原因でね。そしてあの水管の術式は高精度な操作を要求される。そこから、犯人は病んでいる当人ではなく側仕えの者だろう」
「ふーん、動機の盗品一つでそこまでわかるものなのねぇ」
「ハッハッハ、外れたら石の一つも投げてくれたまえ」
「ちょっと!ここまで来て大外れだったら困るわよ!」

シャンティカ君の突っ込みを甘んじて受け入れつつ、私は話を続ける。

「もう一つの理由は、長距離を経由して魔術を行使するにあたり、一足飛びに出発点から迷宮公のところまで術を飛ばすには遠すぎる、といったところだね。休みなく魔術を稼働させるのも非現実的だろうから、チェックポイントとして内容物をとどめたままに出来る中継点が必要だったんだ」
「でも、そんな事していたら人目につかない?」
「リスクはゼロではないけれど、ここは街道からは外れているし、人里からも大分距離があるんだ。最低限、人目につくルートは避けていると考えていいだろう」

【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第三十六話:終わり|第三十七話へと続く第一話リンクマガジンリンク

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