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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第四話 #DDDVM

幸いな事に、ワトリア君との間に協力関係を築くことが出来た。
竜族や他の魔獣、魔術躯体といった存在だけが相手ならいざしらず、今回の事件についてはそういった連中が相手ではない。人間族を主に聞き込みを行うのであれば、彼女の協力は必要不可欠だ。

ワトリア君もその事は疑問に感じていたのか、すぐに追加の質問を出してきた。可愛らしい挙手と共に。

「シャールさん、もう一つよろしいでしょうか」
「人間に対して聞き込みが必要な理由かな?」
「はい、シャールさんは既に犯人の種族の目星がついているのでしょうか」
「ある程度はね。少なくとも同族である竜や、他の強大な存在ではないだろう」

一呼吸おいて、その理由を付け加える。

「彼が抵抗しなかったことや、奇妙な遺体の状態から、犯人はこの場には来ないままに遠隔地からの魔術や神秘、あるいは奇跡を用いて彼を殺害したと私は推測している」
「あの、それでは何でもありになってしまわないでしょうか?」
「いや、例え神秘を用いても、竜を殺害するのは容易ではない。それは医学を志す君にも想像がつくと思う」
「確かに――竜族の方々の生命力、肉体の堅固さは千年城にも例えられるほど。破城級の神秘であっても、傷一つつかなかった例は枚挙にいとまがありませんでした」

彼女の言葉の通り、この世界において神霊や魔王に類する存在ですら持て余す絶対暴君。それが竜だ。そして竜の中でも、私やゴルオーンが属する『真竜』は生半な事では滅ぼすことは出来ない。そう、末席に座する私でも、一応は、ね。

「その通り。神秘のたぐいで簡単に私達の命が奪えるのなら、とうの昔に私達は滅んでいるだろう。だが、今回の事件においては違う。犯人は恐るべき執念で、困難とも言えるゴルオーンの殺害方法を実現したんだ。それは元から強大な力を持つ存在には発想として出にくい、非力な者だからこその積み重ねによるものだね」
「なるほど……シャールさんは、今回の事件が人間族による大規模な仕掛けによってなされた物だと推理されていらっしゃるんですね」

彼女にぶつからないように細心の注意を払って首を縦に振ってみせる。

「うん、人間族か、あるいは人間族に親しい存在だと見立てを立てているよ。もちろん、現実というものはしばしば論理を逸脱した事象を引き起こす物だが……最初は、仮設を証明する方向で調査を進めたい」
「わかりました、引き受けます。それで調べた内容はシャールさんにお伝えすれば?」
「いや、毎回私の住居まで来ていただくのは君に負担を強いすぎる。ちょっと眼鏡を掲げて、じっとしててくれるかな?」
「はい」

私のお願いに、彼女はその精緻な造りの眼鏡をこちらの鼻先へと掲げてみせる。ともするとちょっと爪がかすっただけで壊してしまいそうな彼女の眼鏡へ、自身の指先を向けて意識を集中する。

まるで多弁の花の様な三次元構造の、小さな小さな魔法陣でもって眼鏡を包み込むと、彼女の眼鏡に銀の縁取りが新たに刻み込まれた。

「これで、君がその眼鏡を掛けている時に見聞きした物は、私の単眼鏡を通してこちらにも伝わるはずだ。おっと、プライベートの時間帯は、そのツルに付けたボタンを押して機能を止めて欲しい。君の事を四六時中見つめているのは、少々失礼に当たるというものだから」
「はい、ありがとうございます」

かち、かち、とボタンを押すたびに薄っすらと色づく眼鏡を確認すると、彼女はほがらかに微笑んでみせた。

【雷竜輪切り事件 第四話 終わり 第五話へと続く

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