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作家・思兼正明の不可能犯罪解体理論

「呪術、違う。神通力、これも違う。魔術でもない」

ワンルーム、雑然とした部屋に男性の遺体が一つ。
それが今の私の視界に写る大まかな要素。

「どうかね、思兼君」
「どうかね、と言われましても私は神様ではないですから」
「しかし何でもありのこのご時世、旧来のやり方では中々に事件性を判別出来ないのだよ」
「プロであるあなた方が時代に追いついて欲しいところですが、今回は他殺かと」

鍵のかかったワンルームの死体、外傷無しとなれば自然死扱いが妥当だが、この遺体には残念ながら不審な点は、あった。ご遺体へかがみ込むとVRヘッドセットを取り外して、顔面の異常について指摘する。

「眼球が赤く染まり、耳から出血痕が確認できます。これは脳を直接破壊されたケースに良くみられる特徴です。呪殺、神罰による直接殺傷は心臓を止める手法が良く使われるのですが、今回は電脳死であることがVRヘッドセットからも確認できるのでは」

VRヘッドセットモニタの稼働状況を据え付けのモニタに転送する。
そこに映っているのは赤黒の01表記に『GAMEOVER』の古典的表現があった。

「伏せ給え!」

そこで私は菅原警部によって床に引き倒され、次の瞬間にはガラスが室内に飛び散った。銃撃、それも無人ドローンによる物だ。ドローンが、来る。

「外に!」
「ええ!」

銃弾がドローンを撃墜したのを振り返らずに、我々は現場から飛び出、柵を越えて飛び降りる!直後、殺人現場は轟音と共に橙の炎を吹き出した。爆圧が私の背を舐めてゆく。

「警部、ナイスフォロー」
「君を死体で帰しては、奥方に申し訳が立たないのでなぁ」
「私としては巻き込まれないのが一番ですが。はい、こちらは証拠品です」

埃を払って立ち上がると、黒のお捻りを警部に手渡す。

「君は探偵の他に、スリの才能もあるのかね?」
「私は作家です。それよりも」

背に雲霞の如く迫るドローンを親指で指しながら、私は言った。

「命の保証、お願いします」

【続く】

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