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ノースシ・ノーライフ(6-1)

雅な電子オコト新年ミュージックが、トコロザワ・ピラーに内包されるスシ・バーにも新年の到来を告げていた。

「ソニックブーム=サン!あけましておめでとうございます!」
「おう、今年も励めよレインボーフード=サン」

暗黒ニンジャ犯罪組織ソウカイヤの幹部にして、金糸を織り込んだニンジャ装束を着こんだソニックブームに深々と頭を下げるのは、なし崩しにソウカイヤに所属することになってしまったスシ職人ニンジャ、レインボーフードである。

レインボーフードはその名の通り、PVC七色ニンジャ装束を身にまとい、次々くる新年のスシオーダーに、モータルには分身して見えるほどの速度でスシメイクを行っていた。

「サーモンスシ」
「ハイヨロコンデー!」
「こっちトロスシお願いっす」
「ハイヨロコンデー!」
「ケモビール1ダースだ」
「ハイヨロコンデー!」

瓶ビール1ダース!しかしここはソウカイヤのスシを一手に担うスシバー、この程度の消費量は驚くに値しない。そして、実際在庫が切れるよりも早く、追加のビール在庫がケモビール社の営業によってスシバーまで持ち込まれた。その量は実際ビールの壁のようだ!ケモビール営業が薄くなった頭髪を揺らしてオジギする。

「マイドドーモ、ケモビール社のケモキです。ご注文のケモビールをお持ちしました」
「マイドアリガトゴザイマス!年明けそうそう助かります!」

板場ではダサい所は見せられない。レインボーフードが威勢よく営業を出迎えたものの、営業の表情は冴えなかった。心ここにあらずといった風情である。

「どうしました?何か浮かないお顔ですが」
「ああいえ、その、なんというか……」
「ケモビール社はお得意様!困っている事があれば言ってくださいよ!」

レインボーフードの一言に、ケモキはきっと表情をかためてその悩みを語りだした。

「我社のケモ動物のうち、ヨ-643号チャンがまだ帰ってこないのです。すでに帰宅予定時間から18時間が経過しておりまして……」
「ケモチャンが?」

ケモ動物とは、ケモビール社がネオサイタマに宣伝目的で放し飼いにしている人造バイオ動物だ。牛くらいの大きさでどこかゆるい愛嬌のある顔立ちの、コマ・ガーゴイルのような雰囲気の動物で、その間の抜けた印象からネオサイタマでは人気のマスコットであった。

「ヨ-643号チャンは私が手塩にかけて面倒をみているのです。ですので、ケモ動物の人気に付け入るような、そういった何らかのインシデントではないかと気が気ではなく……しかして、私には仕事があります。営業を放り出して探しに行くわけにもいかず、こうしてやきもきしながら営業回りをしている次第でして」
「さようですか、ケモチャンが行方不明と」

ケモビール社とはソウカイヤに入る前よりの取引先であり、ケモキ営業との関係もそう浅いものではない。何より、レインボーフードはサンシタとはいえ……ニンジャである。暗黒ニンジャ犯罪組織ソウカイヤの所属員でもある。一方で、今板場を預かる、責任あるスシ職人でもある。

逡巡するレインボーフードの横顔を、ソニックブームの視線が射抜いた。

【ノースシ・ノーライフ(6-1):終わり:(6-2)に続く:第一話リンク

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