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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第八話 #DDDVM

「ここ一ヶ月の間に行われた魔術儀式の記録については、追加されていません」
「わかりました、ありがとうございます」

礼儀正しく会釈する彼女に合わせて、私の視界も床へと移る。裏取りのため、見つかった司書に履歴の方を改めてもらったのだが、結局の所、私の最初の推理は少々あてが外れた。といったところだ。

場所を図書館内のひと気のないエリアへと移し、彼女と次の算段を練る。

「無駄足になってしまって、すまないねワトリア君」
「いえ!大丈夫です。それより次はどちらを調べましょう」
「うむ……少し待っていて欲しい」

フェート魔術学部長の示唆から、少なくとも人間の魔術が絡んでいない可能性が高まった。もちろんブラフである可能性もまた、同時につきまとう。だが、ブラフであることを明確に否定できる根拠もある。

「まず、フェート学部長の回答だが……彼は白だろう。理由は明白で、竜殺しの魔術を作り上げたのなら、彼を始めとする魔術の徒にとって王国内にも隠蔽する理由はほぼ無い、と考えられる。竜である私になら隠すのはまだわかるが、その場合はワトリア君の眼鏡にかけた私の魔術は、彼によって解除されたはずだ」
「では、人間の魔術による殺害ではない……と」
「うん、その線は優先順位が大きく落ちたのは間違いない。他の手段を探った上で、やはり無いのであれば再度検討しよう」
「わかりました!」

人間に寄る魔術ではなし。だとすると、次に考えられるのは神霊による神秘か、魔族による魔道か。だが、天地創造から悠久の時を経た結果、大地における彼らの影響力は、はなはだしく低下していた。どちらも平時の力では人間には勝りこそすれど、竜を害するには人間族と同様に力を集約する必要がある。

ここで、一度現代における各種族の標準的なパワーバランスについて述べておこう。基本的には、現行の世界においてもっとも強大なのが竜種だ。これは自種族に対するひいき目などではなく、単なる事実である。

次に神霊と魔族が来る。彼らは長年の闘争による衰退が激しく、伝承に謳われた時代からすれば見る影もないといっていいだろう。もちろん、人間一個人からすればよっぽど強大だし、個体によってはまだまだ竜種の上位に匹敵する力を持つものもいる。

最後に、人間族を始めとする人型の種族だ。種族によって個性はあるが、種としての個体スペックは、どの種族であれ上位種族に及ぶのは難しいのが実情といったところだ。

だが、各種族間での闘争は小康化して久しい。どの種族も、滅びそうになれば必死に抵抗するのは自明の理だ。例え竜でも、暴虐が過ぎて死にものぐるいとなった他種族に敗北した例はいくつもある。神霊や魔族も例外ではなく、近年は各種族間の領域を侵さず不戦状態となっていた。

長くなったが、深手を負うリスクを背負ってまで他種族を攻める理由はどの種族にも少なく、静観しているのが現代の実情だ。平和、とも言っていい。

各種族間にて熾烈な争いが起こらなくなったのは、ひとえにかの不死王の統治による影響が大きく……と、これ以上は今回の調査には関係がないのでここまでにしておくとしよう。

重要なのは、神霊、魔族といえど竜を滅ぼすのは一筋縄ではいかない、という点だ。

【雷竜輪切り事件 第八話 終わり 第九話へと続く

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