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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第十五話 #DDDVM

私の脳裏を、在りし日の彼との会話がよぎる。

「ゴルオーン、その様に飛び立つたびに、辺りへ稲妻を落としていたらいつか、痛い目に遭うんじゃないかい?」
「ハッ、シャールのよく言う『インガオーホー』ってヤツか?くだらねぇな」
「ゴルオーン、私は君を心配してだね……」
「わかってるわかってる、だからよ、一つ賭けをしようじゃねーか」
「賭け?」
「おうよ」

そう言って彼は夕闇の中、細長い身体をくねらせ、こちらを向いていた。もっとも、細長いと言っても人間からすれば巨木の様に太い、圧巻のサイズだったが。最高品質の黄玉ですら遠く及ばない、そんな美しさの瞳が私を見る。

「どっちが先に逝くかの賭けだ。口約束よりは、お互いに守る気になるだろう?」
「ふむん、良いだろう。だが賭けると言ってもお互い、死後に譲れるものなどあるだろうか。君は私の蔵書には、一切興味がないだろう」
「そうだな、まったくもって興味ない。だが、お前の形見になるんだ。賭けに勝ったら、精々大事にしてやるさ。それが嫌なら、お前も精々長生きするんだな」
「言われなくても、そうするとも。死ぬのは怖いからね。それで、君は何をくれるんだい?君は財宝を溜め込むタチでは、なかっただろうに」
「ハッハ、そうだな……万に一つでも、このオレサマがお前より先に死ぬ、そんな間抜けな事があったら……そうさな、俺の亡骸をくれてやる」
「嬉しくないよ、そんなの」
「そういうなって、オレならまあ、仮に人間どもに売れば、それなりの額にはなるだろう。その金とやらで好きなだけホンを買えばいい」
「わかったよ、一応それで賭けは成立だ」
「フフン、結果が楽しみだ」
「ずーっと先になることを祈ってるよ」

そう、あの時に話していた頃は、なんだかんだお互いに、そうそうあっさり死んだり殺されるなんて事は……ないだろうと思ってたんだ。死は私達にとって、まだまだ遠い未来の話……そんな風に考えていたことは否定できない。当時、既に竜殺の英雄が輩出されることもなく、人間族の領域を侵さなければ、特段の危険も無かったんだ。

「シャールさん!通り過ぎちゃってます!」
「おっと……すまない、少々考え事をしていてね」

ワトリア君の呼び声で、自分がいつしか目的地を通り過ぎてしまっていた事を認識する。本当は警戒されないように、離れたところに降りるつもりがとんだ失態だ。ワトリア君には申し訳ないが、このまま一度距離を取って、私が神殿都市に興味が無い様に見せねばならないだろう。

―――――

「伝聞で聞くより、ずっと綺麗な街ですね。シャールさん」
「ああ、一神霊の加護で出来た街としては、かなり大規模な物だ」

白亜で統一されたカラーリングの町並みに、磨かれた宝石の様に透明度の高い水が、縦横に張り巡らされた精緻な水路を辿っている。その様は貴婦人のドレスを飾り立てる刺繍のようで、竜である私の眼から見ても、美しい町並みであることには、疑いの余地はない。

【雷竜輪切り事件 第十五話 終わり 第十六話へと続く

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