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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第十四話 #DDDVM

「それにしても一体どうして、こんな形で悪用することを思いついたんでしょうか……成功するとは限らないのに」
「おそらくは、神霊達には儀式が失敗するとどうなるかまで、伝承されていたんじゃないだろうか。実行者からすれば、必要なリソースさえ集められれば多少失敗した所で、思惑通りにゴルオーンを抹殺できる。正確に成功させる必要性は一切ないのだから、犯行手段としては比較的低リスクに思えるね」

手元の資料には、儀式の詳細と起こりうる結果については書かれていた。だが、流石に失敗するとどうなるかまでは記載がない。まったく異なる世界へと強制的に呼び出され、命懸けの戦いを強いられた挙げ句に、帰れる時も失敗したら命を落としかねない。まったくもって、我が世界は他所の英雄殿に、それほどの負担を強いる資格があるのかどうか。

「送還の儀が失敗した場合は……完全な送還は行われず、対象者の一部だけが送り返されてしまう、と」
「その通り。今頃は、他所の世界に彼の断片が転がっていて、そちらの住人を困惑させているのではないだろうか」
「ううん、ゾッとしませんね……次はどうしましょう?」
「決まってるさ、確たる証拠を持って、女神様にお目通り願わないとね」

ワトリア君に、関連資料を借り受けてもらうようにお願いする。私の推理が正しければ、泉の女神殿は今は神秘の反動で拠点を離れられないはずだ。

「はい、わかりました」
「貸し出しが済んだら、城壁の外から離れた郊外で合流しよう。詳しい場所はまた後で知らせるよ」
「了解です」

―――――

眼下に、見慣れた白と緑のコントラスト。視界を上に上げると一片の曇りもない青空に、太陽がまばゆく輝いている。遥か彼方には峻険なるレアラート山脈が、その岩壁を見せつけ、また別方向には未だ紅く染まる永久火山ダルバントの姿があった。ヴォルギア君はまだ元気にしているだろうか、彼も元気にしすぎて早死しそうなタイプではあるが……

「あああああ、あの!これ落ちたら私死んじゃうんじゃないでしょうか!」
「間違いなく一巻の終わりだね。でも大丈夫。君が乗ってる辺りに力場を張ってるから、君が手を離しても壁に阻まれて落ちる事はない。何だったら、お昼寝しててもいいよ?」

神殿都市アラクトルムは、王都から南西の方角に位置している。徒歩ではおよそ十日はかかってしまう道のりだが、竜の飛翔をもってすれば半日程度もかからない。となれば、私がワトリア君を乗せない理由もないというものだ。

「うわーっ!たかーい!こわーい!」
「うむん、聞いてないか……」

はしゃいでいるのかおっかながってるのか、いまいち判別がつかない。どっちにしてもここで滞空しているのも、意味がないので王都を背にして飛翔する。遠くの方にわだかまる雷雲を見れば、かつてゴルオーンと共に飛んだ日さえ思い出す。彼と一緒に飛ぶと、稲光が私の鱗まで叩いて大層シビシビしたものだ。

【雷竜輪切り事件 第十四話 終わり 第十五話へと続く

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