見出し画像

論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-7-

 一閃。俺の駆る黒騎士が放った居合は、過たずハルピュイアの胸部ユニットを斬り抜き、分割させる。驚愕に目を見開くにも似て目の前のこちらにピントを合わせようとするハルピュイアのカメラ・アイ。

 手にしていた刀を非物質転換しながら斬り抜かれたコクピットブロックを掴むとこちらが後方へと吹き飛んで見えるほどの勢いで距離を取る。空中で宙がえり、奪い取ったコクピットを抱え込んでしまう。

 未だ機体コントロールが万全ではないものの完全に無力化されてはいないのか再度頭部から音波衝撃砲を放たんとする偶像鳥姫。だがS・Cからのハッキングで阻害された隙は余りにも長かった。

 俺がバク転で後方に飛びのいたのと同時に再度チャージを終えたフライシュッツがその機体に走る配線を輝かせるほど金色の光を放ち、機体その物よりもなお巨大な銃砲をハルピュイアへと向けると今までのレーザーとは桁が違う一撃が黄昏から夜へと移り変わる空を貫いた。

 極光が放たれるのと同じタイミングでハルピュイアより音波衝撃砲が放たれるが、余りにもエネルギーの質が違い過ぎた。透明なガラスが砕ける様にあっさりと力負けすると念仏を唱えてやる間もなく、偶像鳥姫の姿はその巨大な羽に至るまでフライシュッツの一撃に呑み込まれ、夜空を昼の様に変える光帯が行き去った後には痕跡一つ残っていない。

 電子論理で出来た偶像は、自由を得る事無く白昼夢の如く夜の訪れと共に消えていった。そんな彼女にかける弔いの言葉など、俺もY・Gも、持ってはいなかったのだ。

ーーーーー

「ッハー……」

 超巨大自由売買商業施設”Note”、その屋上庭園にて俺は自分にしては珍しくライムの切り身を突っ込んだCORONAを呷っていた。夜空を見上げれば、ビルの輝きに押されつつも星が瞬いているのが視認出来る。普段は呑まないのだが、こんな日は呑まないとやってられん。

「お前も弔い酒か、R・V」
「冗談、機械は機械だ、生き物じゃない」

 柵に寄りかかって黄昏れてた俺に、背後からY・Gが声をかける。彼の言葉を否定するも、隣に来たY・Gから差し出された追加のCORONAは大人しく受け取り、とっとと栓を開けてラッパする。

「その割にはペースが速いじゃないか」
「つまらん感傷さ、我ながら修行が足りんのだ」

 二本目を早々に空けると自前で持ってきていた三本目に手を付ける。一方のY・Gは普段とは変わらぬペースでCORONAを傾けている。共通しているのは、今日は呑まなきゃやってられん日という事だった。

「他に選択肢があったと思うか?」
「ないね、俺達が事態を察知した時にはあのAIは誤作動を起こしていた。それを防げたのは現場の研究者達であって、俺達ではない。俺達が首を突っ込んだ時には何もかも手遅れだった。死人が出なかっただけ儲けものよ」

 柵に寄りかかりながら深い深いため息をつく。世の中にはこういう覆せない詰みというのは往々にしてあるものだ。三本目を空けた俺と、一本目を空けたY・Gに対して三人目の来訪者から声をかけられたのはその時だった。

【論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-7-終わり:-8-へと続く

一話はこちらからどうぞ

まとめマガジンはこちらからどうぞ

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかボンズとかサムライとか
ゲームミュージックの紹介エントリィを提供しているぞ!

#小説 #パルプ小説 #ロボット小説 #スーパーロボット #不幸な事件 #パルプスリンガー #れいのきかく #パルプスリンガーパルプ化計画 #人が死ぬ #Vtuber #仮想アイドル #毎日投稿 #毎日小説

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL