見出し画像

論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-6-

 既に夕日が傾く黄昏の中で異形の鳥姫、ハルピュイアが影を作る。俺達もまた、都市上空に舞うハルピュイアを追って自身の機動兵器、ソウルアバターを駆ってビルの上を飛び移る。地上からは二つの巨大な影が鳥のシルエットへと追いすがるように見えるだろう。

 卓越した体操選手めいてビルの屋上へとダメージを与えずに飛び移る、不釣り合いなほど巨大な銃砲を右腕として胴体に据え付け、胸部の動力部と四肢、何より右腕の銃砲へとむき出しの動力配線でつないだ黄金と群青のカラーリングに左半身を放熱外套で覆った機体。Y・Gが愛機とする機動兵器「フライシュッツ」だ。

 不意にハルピュイアより、俺達を、いや地上全てを狙ってそのシルエットの大部分を担う大翼より、羽毛がミサイルの如く襲い来る。本当にこの偶像は見境なく人類を殺傷する気の様だ。

 偶像鳥姫の恐るべき羽弾の雨を迎え撃ったのはフライシュッツが右腕の巨砲より放った、幾重にも拡散する金色のホーミングレーザー。黄金の輝きを伴うその一撃は羽毛弾の嵐を一方的に薙ぎ払い、消し飛ばしていく。

 その一方で、俺はというと自身の愛機である黒騎士を操り、背部の波導制御翼よりビル街上空に向けて青白い光で出来たハニカム状光波防壁を張る。都市部では流石に無制限に破壊活動を行わせる訳にはいかない。羽弾の大部分は既に撃墜されているが、それでもごくわずかな撃ちもらしが防壁に衝突しては焼き消えていった。

「R・V、アイドルのオリジナルはまだあのSAの内部に取り込まれたままだ」
「もちろん、助けるとも。そっちは任せてくれ」

 俺かY・Gのどちらかでも手加減なく攻撃すれば、オリジナルの人物は助かるまい。偶像AIにとってもそれは承知の事で、安易に奪わせるつもりはないだろう。だがこちらにも策はある。そして救い出す方はこちらの方が向いている。

 今後の立ち回りを確認し合った俺達へと偶像鳥姫はその異様なる頭部を向けるとあやかし口裂けめいて掻き開いた。咄嗟にフライシュッツの前方に出ると第二の光波防壁を展開する。偶像鳥姫の頭部より放たれたのはハルピュイアを模した姿に相応しい音波の衝撃。

 流石に有視界内に張った都市群を保護する防壁へと機体出力の大部分を回しているため、ノーダメージに抑え込むというわけにはいかなかった。光波防壁が衝撃で消失すると同時に俺の機体へと音波砲の衝撃が伝わった。

「ぐぬ……っ!」

 衝撃の厄介な所はまともに受ければ少なからず内部に浸透するというところだ。装甲に緩和されたとはいえキツイ音の衝撃を体感して脳が揺さぶられる。ブッダファック、やってくれるじゃないか。

 一瞬機体をふらつかせるも素早く宙がえりしフライシュッツの前より退く。俺が保護し、健在だったフライシュッツの右腕は充分にエネルギーを溜め込んで光り輝いており、銃口から収束された金色のレーザーを放つ。あやまたずハルピュイアの翼へと着弾するとぽっかりと穴が開いて黄昏の空をすかして見せた。

 着弾にもひるまず第二の音波衝撃砲を放たんとするハルピュイアの動きが、その瞬間痙攣して停滞した。

【論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-6-終わり:-7-へと続く

一話はこちらからどうぞ

まとめマガジンはこちらからどうぞ

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかボンズとかサムライとか
ゲームミュージックの紹介エントリィを提供しているぞ!

#小説 #パルプ小説 #ロボット小説 #スーパーロボット #不幸な事件 #パルプスリンガー #れいのきかく #パルプスリンガーパルプ化計画 #人が死ぬ #Vtuber #仮想アイドル #毎日投稿 #毎日小説

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL