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論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-3-

 硬質の奇妙な足音が上層の階に上り詰めた俺とY・Gに伝わってきた。階段から白く味気ない色彩の廊下に出ると通路の先から現れた何かの姿を見た時、俺は電子ゲームのバグったグラフィックの敵が出てきたような印象を受けた。

「アンドロイドか」
「ああ、生き物じゃなくてよかったが、そうでなくったって悪趣味だな」

 通路を塞ぐように身動ぎしている物体は、人間の余ったパーツを無理やりつなぎ合わせて人型に組み立てたような代物で、頭部を彩るパーツもどれ一つとってもちぐはぐでB級、いやC級ホラー作品めいた粗雑さが返って不快さを煽ってきている。

 階段はT字に通路につながっており、乱雑アンドロイドは双方の通路の先から迫ってきている。胴体に腕を四つつなげて蜘蛛めいて這ってくる個体に腕の部分に脚をつなげただけの個体、上半身が腹の部分でつなぎ合わされた個体などバリエーションには富んでいるが一個だにまともな個体は見つからない。

「Y・G、左手の連中を頼む」
「ああ」

 銃を手にいつでも撃てる体勢だったY・Gは即座に左側のアンドロイド群に向き直るとすぐさまマグナム弾を乱雑造形アンドロイドへと冷静に撃ち込んでいく。発砲音の直後に機械が砕ける音。右に向く前に俺の視界の端に中央部を正確に撃ち抜かれジャンクとなって散らばる雑造形アンドロイド。

 俺もまた後ろ腰に帯びていた、関の名工ガーベラマン氏制作のハンドガード付き大型ナイフ「アトラス」を引き抜き、飛び掛かってきた雑ロイドを唐竹割りに両断、しかる後ハンドガードの部分で強かに殴りつけ粉砕する。プラモデルがひしゃげる様に通路に舞い散る残骸を踏み越えて雑ロイドの群れが迫る。

 迫りくる多脚ムカデ雑ロイドが俺に蹴りかからんとするもナイフの斬撃が強固なアンドロイド脚をトーフの様に切裂き、誤作動を起こして痙攣するムカデ雑ロイドにおざなり据え付けられた頭部をこれまたハンドガードをカイザーナックルがわりに殴りつける。西瓜割りめいてマネキンの様な頭部が砕け、制御チップもろともに破壊。

 雑ロイド群はその乱雑な造りに反して動きは素早く、また挙動がもたらす通路の損傷から駆動部の出力も高いと考えられる。下手に組みつかれればひき肉になるのはこちらの方だと推測できた。

 メギィ、と俺に顎を蹴り上げられた胴多連結雑ロイドが頭部をもがれサッカーボールの様に天井に叩きつけられてひしゃげた。さらににじり寄る雑ロイドの頭部を深々と貫き壁にたたきつけながらY・Gの方へと振り返った。

「Y・G!そっちはどうだ!」
「問題ない」

 Y・Gは至極淡々と迫りくる雑ロイド群を銃撃粉砕し続けている、しかし、銃の弾切れのタイミングで目の前に迫った多腕多脚多頭雑ロイドがそのむやみに多い腕部で掴みかかってきた。だが、Y・Gは取り乱すことなく利き手を突き出すと多腕多脚雑ロイドの胴部を手刀でもって貫く。

「歪め……っ!」

 Y・Gの放った裂帛の宣告と共に多腕多脚雑ロイドはまるで紙をくしゃくしゃに丸めたが如くゆがみ、ひしゃげ、バラバラになって通路に散った。その様を視線の端で捉えながらも俺もまた次々と雑ロイドを解体していく。

 5分経たないうちに白い廊下はアンドロイドのジャンクパーツが散らばる惨劇の場と化した。残心を決めてアトラスを鞘に納める。

「社内には見当たらない社員に暴走雑造形アンドロイド、いよいよホラームービーめいてきたな」

 感想を述べる俺にかまわず、Y・Gは銃に予備マガジンを装着すると銃身を引いて弾丸を装填する。

「怖じ気づいたか?」
「まさか、ネズミのお化け屋敷の方がまだ怖いね」

 シニカルに茶化して見せると、俺は右側の通路へと向き直る。サイバーオバケアトラクションはまだ始まったばかりだ。

【論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-3-終わり:-4-へと続く

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