冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第ニ十八話 #DDDVM
私が講義に意識を割り振っていた間に、一行は長い長い蛇行回廊を抜けて、途方も無い広さの半球空間へとたどり着いていた。この聖堂を思わせる空間の天井にはやはり葉脈めいてほのかな光のラインが走り、地の奥底にもかかわらず見通すのに支障のない光量がもたらされている。
「ここは……?」
「おそらく最深部、公の体内でもっとも空間を割いている場所……つまり宝物庫さ」
「でも、なにもないわよ?」
「しまわれているんだ、今はね」
「しまわれている、ねぇ……」
一見無意味に開いた空間の中央へと、一面に張り巡らされた光葉脈のラインは集約されており、一帯の中では目に見えて強い光を放っている。ワトリア君の眼鏡にかけた術式を調整して眼をこらすと、そこにはワトリア君の腰の高さほどの円柱があり、その頂点から光が漏れている事が視認出来た。
「リューノ殿、あの中央の円柱に王家より預かった品をかざしていただきたい。罠は今の段階ではないと考えているから」
「ええ、わかりました」
「えっ、罠とか……あるんじゃない?」
「いえ、大丈夫です。仮に万が一の事があっても、対処してみせますので」
仮面の放浪者は、その帳の奥で笑顔を見せた様な気がした。
彼は言葉通りに迷うことなく円柱へと王家より託された精緻な紋章盤をかざす。すると、円柱頂点にはめ込まれた球体より、かざされた紋章へと光が走りその表面をなぞっていった。瞬間、伽藍の堂であった空間がにわかに騒がしくなった。
「二人とも、私の側へ!」
「は、はい!」
中央より距離を取っていた二人がリューノ殿の側へ駆け寄る合間にも、宝物庫の変化は続いていた。空っぽだった空間には、今や壁面から組木細工を取り外すかのようにいくつものブロックが開放され、床からは無数の幾何学形状の壁材がせり出していく。
「すごい……」
ワトリア君のつぶやきを合図にでもしたかのように、宝物庫に整然と並んだ物品を収めた箱達はぴたりと止まる。完全に内容物を提示したのだろう。
「すごいけど、これって亡くなってる方が出来る事なの?」
「それについては道すがら説明しようか。この宝物庫の展示物についてはどこに何があるのかの目録も託されている、君たちには私が目処をつけた物品の確認をしてほしい」
「りょーかい、それじゃ指定して?」
私はシャンティカ君の求めに答えて、今いる地点の直ぐ側に現れた階段をおり、今の階から三階層降りた先へ向かうように案内する。
「それにしてもやっぱり不思議というか……今、教えてくれるっていったけど、亡くなってるのにこうも整然と動けるものなの?」
「公が亡くなられているのは、間違いないと思うよ。彼はやはり私達のような一般的な生物とはことわりを異とする存在なのだろうね」
「亡くなられてはいても、身体機能としては今も維持されている……ですか?」
「その通り、我ら竜でも死を越えて身体機能の維持を継続するのは難しい行いだ。彼の来歴がますます気になるところだとも」
一行は、開かれたさらなる地下への道筋をたどる。
【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第ニ十八話:終わり|第ニ十九話へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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