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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第六話 #DDDVM

例えば、図書館という存在の重要性をあなたは感じたことがあるだろうか。
竜族において知の伝承や蓄積という概念は往々にして軽んじられがちだが、(もちろん、その重要性を認識し、知識の保存を重視する竜は私以外にも存在する)それは竜が長命かつ、自分自身への知の累積能力に秀でているからだ。

加えて、生来の種としての強靭さが、勉学の必要性を甚だしく引き下げている。竜とは生まれながらにして他種族に対して、絶対者であると言って良いのだから。必要がなければ努力を怠りがちなのは何も人間族に限ったことではなく、竜族も同様だと言えるだろう。

もっとも、個体としての差を知恵で埋めてきた私にとって、他者がその叡智をしたためた蔵書が山と保存されている図書館は、積み重なる黄金や魔具神器の類いを遥かに超える魅力を持つ施設と言えた。

アルトワイス王立学院に設立された図書館は、王国随一の教育機関に付随する施設とあって、国内ではここ以上の書籍の情報源は無い。流動的な情報であれば、魔術協会、各ギルド、あるいは場末のバーなども候補にあげられる。だが今回はそれらの施設の優先順位は低いと私は見ている。

図書館の室内は世代を経て艶の出た木材で設えられており、高い天井に至るまで本棚がそびえ立ち、隙間なく分厚い表紙に覆われた学術書や本来は読み捨てであろう文庫に、果ては巻物といった種々様々な『書』が収められていた。

「そんなに気になりますか?」
「もちろんだとも。私が長年収集した蔵書も、ここに比べたらほんの一部に過ぎない。ぜひ丸一日入り浸って片っ端から読み漁りたいものだが……いかんせん、竜、だからね。私は」

今の一言に、暗にちょっとスネたニュアンスが含まれてしまったかもしれない。我ながら大人げないことだ。ワトリア君にも伝わったのか、フォローを入れてくれた。

「事件が解決したら、私の名義で何冊か借りましょうか?」
「本当かい!?あ、いや、まずは目の前の事件解決に集中しようじゃないか」
「ふふ、わかりました」

ついはずんだ声色で返事してしまったのを反省しつつ、当座は事件解決に集中することを約束する。

「私にとっては知識だけの情報だが、専門ではない分野を自分で探すよりも司書の方に協力を申し入れた方が適切だと考えているよ。こちらの図書館にも司書を担当している方はいらっしゃるのかい?」
「はい、先程受付をのぞいた時にはいらっしゃらなかったので、館内を探しつつヒントになるような本を……」
「了解したよ、それでは今から指定する条件に該当する本を探して欲しい。司書さんには、直近で行われた大規模な魔術儀式による実験履歴のレポートについて提示を依頼して欲しい」
「ええ、承知しました」

図書館の中はまるで本棚で仕切られた迷宮のようで、棚の列ごとに、魔術、科学、医術、農学、経済といった専門書が詰め込まれていた。アルトワイス王国がこの様な学術を重視することになったのは、交流国の統治者である不死王の働きかけに寄るものだと伝え聞いている。

【雷竜輪切り事件 第六話 終わり 第七話へと続く

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