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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第十六話 #DDDVM

「でも、簡単に神殿内に入れるものでしょうか?」
「祭事の後だから、一般の参拝客として中に入れるはずだよ。元々、観光地化しているから」
「了解です、行ってみましょう」

いざとなれば、術式を施した眼鏡を介して、彼女を守る手段の一つや二つはある。それが共同調査を持ちかけた側の、責任というものだ。
しかして、穏便に話が進むのであれば、もちろんそれに越したことはない。

神殿は、この街の中心地、陣としても中核をなす地点に存在した。縁起を思い起こすと、この街は元々、女神の住まう泉を中心として、発展した経緯がある。であれば、神殿が中央にあるのは何ら不自然ではない。不自然ではないが……それすらも、女神の復讐を果たす上での、通過点だったといえる。

朗らかに笑い合いながら、町中を観光していく旅行客達の中をすり抜けながら、ワトリア君は真っ直ぐに、神殿へと向かっていく。神殿へと向かう大通りは、観光客向けの華やかな商店街だ。黙っていても商売になるがゆえか、店員達は呼び込みなどは行わずに、のんびりと客待ちしている商店が多い。

「あんまり……警戒されたり、してませんね」
「それはそうだとも、君は一介の学生だし、私は警戒されないよう十分に離れてから、大地に降りたんだから。今の君は、この街の住人からすれば、タダの観光客にしか見えないだろうね」
「安心しました、その……喧嘩とか、戦闘とか、私はからっきしですので」
「うん、私としても無用なゴタゴタは避けたい。これまで、さして害の無い竜として振る舞ってきているし、その築いた信頼を崩したくはないのでね。といっても、君に何か危険が迫った時は、話が別だが」

そうこうしているうちに、神殿が目の前まで迫ってきた。神殿と言っても、他地域に存在するような、白亜の建築物ではない。ほぼ円状の泉に向かって、足場がせり出した様な舞台。そして舞台を天蓋の様な構造の建物が、奥ゆかしい荘厳さを付与していた。ここの女神が泉にまつわる神性である以上、人間の様な住まいは不要という訳だ。

一大イベントが終わった後なので、流石に参拝客もまばらで、豊かな神殿都市の信仰対象とは思えないほどに閑散としている。もっとも、神前には装甲鎧を着込んだ神殿騎士が二人、微動だにせずはべっていた。

「あ、あの!」
「なにかね?我らが女神への参拝であれば、我らに許可を得る必要はないとも」
「うむうむ、刺客であればいざしらず、君はその様な人物には見えないな」
「ありがとうございます、決して失礼な事はいたしませんので」
「なあに、少々品のない話をするなら、こうして参拝者が訪ねてきてくださるおかげで、我らもこうしてふんぞり返っていられると言うものよ。ハハハハ」

心のゆとりゆえか、左右どちらの騎士も、フランクな感じでワトリア君に応対してくれた。流石に魔術の徒ではない故か、私がこうして眼鏡越しに覗いているなど、予想だにしていない様子である。

【雷竜輪切り事件 第十六話 終わり 第十七話へと続く

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