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魂の灯 -30- #ppslgr

お寿司、中華、ピザ、ステーキ、カレー、ラーメン、主だったメニューはやはり作りたい人も多いのか、フードコートエリア内に揃えられていた。

「とてもおしゃれね。ここに物理的に来るのは初めてだけど、ユーザーコンテンツとは思えない位」
「手が込んでる、オレにはとても無理だ。皆スゴいなぁ」
「アナタはアナタ、文字書きなんだからそこをガンバレば良いのよ」
「そうだね、そうする」

ノアにたしなめられつつも、励まされるとそれ以上のボヤキはやめておく。
二人で、イタリア料理の店舗に入ると、何気なくメニューを開いた。

「何にする?」
「好みと言えるほど、私の中に味覚情報の蓄積があるわけじゃないから、アナタの好きな物で良いわ」
「わかった」

やはり、人間の女性とはまた勝手が違うと言えたが、さりとてそれを理由に度の越えた横暴が突きつけられるわけでもない。バティにとって彼女の要望は、叶えられる範囲ではあった。

モッツァレラ多めのマルゲリータと、緑黄色野菜の彩りが美しいサラダに、トマトとニンニクソースのパスタというスタンダードなメニューを頼むと、店員は楚々とした態度で注文を受け付けてくれた。

カランと氷が鳴る。

「あー、一つ気になってたんだけど」
「何かしら?」
「君、AIだよね。大分人間に寄ってるけど、ナンデなのか、理由があるのかと思って」
「あるわ。端的に説明するなら、フロイラインみたいな先発のモデルと違って私達後発のモデルは、Note内に累積した情報を元に人格を構築されてるの。正確にはAIが担当しているジャンルに大きく左右される、といったところかしら」
「という事は、アレだ。君達は電子で出来たオレ達の女神様って事だ。新時代の」
「そこまで持ち上げられると、流石に面映ゆいけど……そういうことね」

コップを手にとる動作一つとっても、ノート・アイドルの所作は優雅さと可憐さを兼ね備えていた。とても、作り物とは思えない程に。

「私は、ユーザーさん達が作品に込めた『可愛く有りたい』って願いの産物なの。上手く出来てるかは、まだちょっと自信がないんだけれど」
「上手くやれてるよ、大丈夫」
「ありがとう。でも、カワイイって、難しいわよね」
「まあ、確かに」

物憂げな彼女の表情は、それはそれで見目麗しい。バティにとっては、劇物だ。

「あ、もう一つ聞きたいけど、これ聞いていいのかな」
「余り、ユーザー支援にやる気が見えないところかしら」
「あ……うん、それ」
「ふふ、私なりに理由ならあるけれど。もう少し私に尽くしてくれたら答えてあげるわね」
「わーい、がんばります」

上手く、はぐらかされてしまった。そういう所まで含めて、彼女は電子的な蠱惑的魅力というものまで兼ね備えているように見えて、バティは重篤な麻薬を摂取しているような心地にさえなるのだった。

気が気でない彼の前に、滑り込むようにトマトの赤に染まったパスタが湯気をたてたままに運ばれてきた。とりわけサイズに盛られたそれは、人間であれば食欲をそそる代物だった。

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