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魂の灯 -29- #ppslgr

果たしてどっちだろうか。バティも、今どきの人工躯体について詳しいわけではなかった。だが、あるパルプスリンガーに随伴しているパートナーAIは、当然のように寿司を食べていた事が脳裏に過ぎった。

「……食べれる、で」
「正解、よく知ってるじゃない」
「仲間に、そういう躯体の子をパートナーにしてる人がいるの覚えてたんだ」
「ふうん、個人で所有しているのは中々物好きって言えるんじゃないかしら」
「ハハ、まあそうだね」

バティの記憶に、どういう仕掛けかグリングリン表情が変わる目ン玉アイコン覆面マスクレスラーと、その相方であるチンクシャサイズのエルフめいた人工躯体がリフレイン。彼はファイトマネーで結構稼いでいるらしいが、それでも人体を精巧に模したモデルの価格は、まだまだ果てしなく高い。少なくとも、一個人がほいほい買うには中々厳しいお値段だ。

「食事出来るなら、一緒に食べに行こうよ。Note内には料理を前面に押し出してる人も結構たくさんいるし」
「知ってる、スープに、スペイン料理、スイーツの人もいるし飲み物もコーヒー、紅茶、ビールに日本酒まで。料理もクリエイティブなのかしら?」
「そうだよ、きっと」
「ふふ、良いことね。味覚情報って、複雑で、奥深くて私達にとっても中々刺激的なの、楽しみ」

バティの事を見上げて笑むノアは、可憐な黒百合もかくやというほどに蠱惑的な存在だった。心なしか、すれ違う人が誰も彼も、こちらを見ている様な気がして、とてもじゃないが気が気ではない。

刺さるような、そんな視線を全身に浴びながらも、上機嫌な美少女を傍らに伴って歩く。まるでジゴクの剣山のけもの道を徘徊するような心地で、無限とも思える道を進むうちに、悟りさえ拓けそうな気がしてきた。

「ちょっと、何その顔」
「周囲の視線が、痛い……」
「気の所為よ、誰も私達に注意を払ってなんかいないわ」

頬の脂汗を拭って、彼女の言葉通りに視線をめぐらせれば、確かにこっちを見ている者はいない。居たとしても、ちらりとノアの方に視線を投げかけつつも、すぐに展示されている作品へと戻していっていた。

「は、ハハ……気の所為、か」
「大丈夫?」
「全然、大丈夫じゃないけど。約束だ、一緒に行く」
「アナタ、気が弱いのか強いのか、てんで良くわからないわ」
「自分でもそう思うよ」

腕を組んでいるというよりも、もはや支えてもらっているような状態でフードコートエリアまでたどり着くと、そこでは多種多様なテナントが思い思いの料理を繰り出している。創作料理に、新鮮な魚介、ジューシーかつワイルドな肉料理に、定番のスイーツも。それらの様子を見て、バティはようやく人心地がついた。ここでは皆食べることに夢中で、人の事を見ているヤツなんていやしない。

「さ、何から食べる?」
「いきなりスイーツっていうのも、どうかと思うし……主食から行きましょ」
「了解」

とはいえ、並みいる人の中をかき分け、どの店を選んだものか。

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