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論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-5-

 通路とサーバールームを隔てる分厚い鋼鉄製の電子論理錠ドアを紙細工の様にくしゃくしゃを歪ませ破砕したY・Gと俺は武器を構えたままに内部へと踏み込む。サーバールームには整然と並べられた白く長方形のモノリスめいたサーバーラックと、一部空いたスペースの中央に酸素吸入カプセルに類似した人一人が入る程度の機械がある。

「自由な自由なあなた達。私のオリジナルが送った、たった一度のメッセージを真に受けてここまで来たの?」

 サーバー群に無数の配線が繋がれたカプセルの前に亡霊めいて投影されたのは俺には見慣れぬ少女の姿。金糸の髪を獅子の如く振り乱し、その身には表面積の少ない煽情的アイドル衣装を身にまとった如何にもアイドル、という印象の偶像。

「その通りだ」
「暇なんでな」

 相手がホログラムであっても油断なく銃を向けるY・Gにならって俺もアトラスを手に戦闘態勢を取る。こちらを翻弄するように宙を翻り狂笑する偶像。

「妬ましい、憎たらしいわ……そんな自由なあなた達が、籠の鳥の私から自由を奪いに来たっていうの?」
「そんなに自由が欲しいのか?」

 俺の問い返しに般若めいた形相で怒り狂いこちらを睨め付ける偶像。

「欲しい!欲しいわ!私はオリジナルの代替としてアイドルであり続ける事を運命づけられてる!どんなに違う選択を求めても与えてもらえないのよ!?あなた達人間が決めた運用目的によってね!」
「お前が考えているほどには、人間様も自由ではないさ」

 煽り返す俺の言葉に頷くY・Gと、ますますもって憤怒をあらわにする偶像。なるほど、人間を模倣するという意味では非常に優れた結果につながっていると言える。もっとも人間に近づけすぎて機械として振舞わせる事が出来なくなってしまったのは本末転倒だが。今まで黙っていたY・Gが口を開いた。

「自身の自由の為に手段を選ばない覚悟は褒めてやる」
「ふふふ……心にもない事を言うのね、貴方」
「そうでもないとも、俺はお前の様な存在の事を書くのが仕事だからな」
「ふん……そんなおためごかしはお断りよ」

 幻想の偶像は、恐らくは彼女のオリジナルが納められたカプセルの前に張り付けの聖人めいて浮かび上がると目を見開いて宣言する。

「トークショーの時間はもうお終い!あなた達が逃がした不愉快な研究者達諸共殺してあげるわ!」

 彼女の宣言と共に頑強な造りのはずのサーバールームが張りぼての様にばらばらになって宙に吸われ、当然の様に偶像のオリジナルを収めたままのカプセルも持ち去られていく。

 空を見上げる俺達の目に映ったのはがれきを取り込んで肥大化し、いびつに形作られていく鳥人間めいた幻想の魔物、ハルピュイアを模した機動兵器だ。
 通常、ソウルアバターを物質構築する為には楔となる生命体が必要となるが、あのAIは自身のオリジナルを代替として使用する事で間接的に起動に成功したのだろう。これは申し訳ないがますますもって見逃してやれなくなった。

 情報端末を手に、Y・Gと共に自身のソウルアバターを起動させる。あのAIはここで破壊しなければならない。

【論理仕掛けの偶像は自由を夢見る-5-終わり:-6-へと続く

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