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冥竜探偵かく語りき~雷竜輪切り事件~ 第十三話 #DDDVM

異なる世界より召喚された英雄。彼らは時に猛威を振るい、時にはさしたる成果も残せないままにこの世界に散っていったという。

遥か古代においては、神々の尖兵として幾度となく英雄達が徒花として、呼び出されては数奇な運命を辿っていった事実。それらは今や伝承の中のおとぎ話として民間に語り継がれているのだが……もちろん、資料としてはちゃんと残されていた。

「シャールさん、一つ質問したい事が」
「召喚では、こちらに存在する生き物に干渉出来ないのでは、であってるかい?」
「はい、英雄召喚は全く異なる異世界から、こちらの世界へと召喚を行う儀式とのことです。殺害方法だったとして、一体どの様に応用したのでしょうか」
「何、シンプルな話だとも。呼び出したのであれば、当然――やり遂げた英雄達を元の世界に送還しなければならない」
「あっ、今回は送還だけを応用すれば良かった、そういうことですね?」
「その通り。召喚と送還の二行程では、莫大な信仰、神通力が必要となったのだろう。だけれど、今回は送還だけ行えばそれで良かったんだ」

ワトリア君に、『神秘と奇跡』を紐解いてもらう。
一般には既におとぎ話扱いではある。しかしてその実、この世界の歴史に大きな影響を及ぼした大儀式であることは疑いの余地はない。神秘の研究者達には欠かす事の出来ない題材であった。実際、書の中にも可能な限り伝承を書き記したと思しき、詳細な記述が残されていたんだ。

「シャールさん、これを」
「ああ、送還の儀において敷かれる陣地だね。アラクトルム市の祭事パレードのルートと重ねてみよう」

彼女の眼鏡の中で、二つ、正確には三つではあるが、その図形を重ね合わせてみる。はっと、ワトリア君の息を飲む音が私にも伝わってきた。

「一致して、います――!」
「アラクトルム市の地形、年に一度の祭事のパレードのルート、そして英雄送還の儀の陣……ここまで見事に一致するのは、偶然ではありえないことだ。アラクトルム市は最初から――ゴルオーンに女神が復讐するために用立てた街だったんだ」
「一体、どうしてここまで……」
「彼の過去の暴れん坊っぷりたるや、それはもういつ、誰から復讐されるかなんて、さしもの私も推理できない位だったよ。でも一つ、心当たりがある」

図書館のデスクに、開かれたままの歴史書に向かってレンズ上に矢印を表示してみせる。

「アラクトルム市の起こりは元々、森が焼き払われた事によるものだったね。ちょっとそこの辺りの話に、詳しい流れが無いかもう一度読んでもらえるかな」
「わかりました。ええと、森が焼き払われたそもそもの原因は――多数の雷が降り注ぎ、山林が炎上。火がついた後も絶え間なく雷が落ち続け、辺り一面真っ白な灰に覆われるほどに燃え盛った――とのことです」
「彼だね。おそらくはタチの悪いことに、彼には全く悪気なんてなかったと思うよ。虫の居所が悪い頃合いに、たまたまその地域を通り過ぎてしまった――そんな所じゃないかな」

そんな事で犠牲になってしまった何者かも気の毒であれば、ちょっと不機嫌なままに散歩した意趣返しで殺されてしまったゴルオーンの方も残念な事だろう。だが、この様な行き違いは往々にして起こってしまうのが現実というものであった。

【雷竜輪切り事件 第十三話 終わり 第十四話へと続く

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