フォローしませんか?
シェア
誰も悪くないこれは悲劇や
2019年10月11日 00:02
人影を見たと飛び出していった島田が、霧の向こうからぼくらを呼んでいる。 おーいおーいと繰り返すその声は、確かに島田のものに違いなく、でも、いくらこちらが話しかけても何も返してはくれず、ただメトロノームように淡々と、何時間もずっと、おーいおーいと繰り返している。声の合間、霧の向こうに見え隠れする手をふる島田の輪郭は、頭が大きくふくれあがり、床に垂れ下がり、明らかに人のかたちをしていない。「
ディッグ・A
2019年10月1日 20:18
「すゥいませんンン。ちょっと、よォろしいですかァ」 ある夜。顔面針だらけの男に声をかけられた。深緑色の全頭マスクに穴は無く、短い針がびっしりとうわっている。身にまとうこげ茶色のロングダッフルコートは何かで塗り固められたように硬そうで、足元は該当の光に照らされているのに、よく見えない。 怪人だった。どこからどう見ても。「よくないです。失礼します」 そう口にしながら登ってきたばかりの坂