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胡蝶蘭に罪はないけど

写真:自然の中に生息する胡蝶蘭

胡蝶蘭の鉢植え、好きですか。自分で買う人はあまりいないと思うけど、贈られて嬉しいですか。

会社の社長室や受付に飾ってあったり、お店の開店祝いなどに贈られたりする胡蝶蘭。あの鉢植えを見るといつも、これを贈った人は、綺麗だからとか自分が好きだからとかじゃなくて、”値段が高くて見栄えがする”から贈ったんだろうなあと思う。相手はこの花が好きだろうか、喜んでくれるだろうか、なんて考えていないだろうと思ってしまう。

私が胡蝶蘭の鉢植えを好きじゃないのは、人の手が加えられすぎて生きている花には見えないからだ。誰が胡蝶蘭をあんな造花のような鉢植えにしてしまったんだろう。盆栽みたいだから、やっぱり日本人だろうか。

野生の胡蝶蘭はどんななんだろうと思って写真を検索してみた。綺麗だった。自然の中で呼吸している。でも、鉢植えの胡蝶蘭はまるで貞操帯をつけられた女性のよう。鉢植えの胡蝶蘭には自由も喜びも生命も感じられない。

胡蝶蘭を検索していたら「回収」とか「引き取り」というワードが出てきた。胡蝶蘭の鉢植えを引き取りますというのだ。あの胡蝶蘭は花が枯れたらどうなるんだろうと思っていた。花が終わったあとも丁寧に世話をする人はいなさそう。花が終わった後の胡蝶蘭は置く場所に困る厄介なものなのだ。「胡蝶蘭の引き取り」というサービスを必要とする人は多いのだろう。

なんだか胡蝶蘭がかわいそうになってくる。まるで廃品回収みたいではないか。若くて綺麗なうちは働けるだけ働かされて、歳をとったらポイと捨てられた江戸時代の遊女のようだ。

胡蝶蘭に罪はないけれど、私は贈られても嬉しくないし、人に贈ることもないだろう。胡蝶蘭が好きな人がいたらごめんなさい。



らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

らうす・こんぶのnote:

昼間でも聴ける深夜放送"KombuRadio"
「ことば」、「農業」、「これからの生き方」をテーマとしたカジュアルに考えを交換し合うためのプラットフォームです。


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こんぶ
ライター、日本語教師、KombuRadioパーソナリティー。21年間住んだニューヨークから帰国。noteで知り合ったパートナーとYouTubeで「昼間でも聴ける深夜放送”KombuRadio”」スタート。noteでほかのライターと「ニューヨーク、ときどきDIARY」でコラボ。


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