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Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/02/19 第384号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

Lifehacking.jpの堀さんが、vlogで書評動画をアップされていました。

◇#022 [VLOG] 人生を変えるアルゴリズム。早川書房の「アルゴリズム思考術」レビュー - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Y0KVBuvUCxA&t=134s

私も前々から本を紹介する動画を作りたいと思っていたので、この動画には大きな刺激を受けました。とは言え、動画を作り込むような時間はぜんぜんないので、やるにしてももっとラフな感じにはなるだろうな〜、どうしようかな〜、と軽く悶々としていたところ、頭のアイデア倉庫に眠っていた一つのアイデアが突然発掘されました。

そのアイデアとは、このメルマガの概要などを音声・動画で紹介してはどうか、という某シゴタノ!の中の人の提案です。音声・動画ならば「ながら」で消化できるので──このボリュームが多いメルマガの利用方法としては──なかなか良さそうです。

ここで二つのアイデアが結合します。「このメルマガで書いている”今週の一冊”を読み上げる動画を作ればいいのでは?」

一石二鳥ではありませんか。2000字の読み上げでどのくらい時間がかかるかはわかりませんが、5分〜10分程度には収まるでしょう。でもって、私はこのメルマガを語るように書いていることが多いので、多少手を加えるだけで読み上げ原稿としても使えるかもしれません。

とまあ、アイデアだけは盛り上がっていますが、実際にやってみるかどうかは今のところ未定です。

〜〜〜ひとり重版出来〜〜〜

Twitterでは、本を書いている人をわりとフォローしているので、ときどき「重版出来」のツイートを見かけます。ラフに言えば「増刷が決まったよ」という告知です。

私も同じ物書きとして、そういうツイートを見かけると、無性に嬉しくなってきます。たぶんミラーニューロン的なものが活発に働いているのでしょう。

しかし、とふと私は気がつきました。セルフパブリッシングには、この「重版出来」的な嬉しさが少ないな、と。

もちろん電子書籍なので増刷という概念がないことも影響しているのですが、それ以上に「重版出来」的な嬉しさには、自分だけの嬉しさではない、という点が関係しています。増刷が決定したということは、それなりに売れて、これからも売れることが見込めるということでしょう。出版社さんも利益があがり、書店さんも利益があがり、もちろん著者にも増刷分の印税が振り込まれることになります。win-win-winです。

「重版出来」には、このようなステークホルダー全体を巻き込むような嬉しさがあります。もう少し言えば、チーム的な嬉しさがあります。

その点、ひとりでやるセルフパブリッシングだと、自分が売れて嬉しいのと、せいぜいプラットフォームが儲かって嬉しいくらいしかありません。あまりチーム感は感じられないものです。

もちろん、そのようなスリムな形だからこそ、セルフパブリッシングには機動力があり、これまでにない本作りができるわけですから、そこはトレードオフと考えておくのがよいでしょう。

とは言え、2018年以降は、複数人でのセルフパブリッシング(私はこれをセルブズパブリッシングと呼んでいます)がどんどん増えていくでしょうから、また違った形になっていくのかもしれません。

※ちなみに、「かーそる」が売れたり、褒めてもらえたりすると。すごく嬉しいです。ここにはチーム感があります。

〜〜〜ブロック〜〜〜

自分のTwitterを見ると、「2009年4月に登録」とあって、ずいぶん長いこと使っているわけですが、先日初めて「このツイートは、ブロックされているので見られません」的な表示を見かけました。

おぉ、ブロックされている!

という感慨が湧いてくるのかと思いきや、そういう感情はまったくなかったです。個人的な感想を率直に言うと、わりとどうでもいいですね。

〜〜〜中に置くアイデア、外に出すアイデア〜〜〜

日常的にいろいろなことを思いついては、メモとして書き留めているのですが、最近Scrapboxを使っていてあることに気がつきました。

アイデアメモの中には、とりあえず保管しておき、それを後から利用するものがあります。おそらくアイデアメモの扱い方として一般的にイメージされるものでしょう。

しかし、自分だけで保持しておくのではなく、他の人と共有した方が広がりがあるアイデアもあります。

たとえば、「ノートブックとは何か?」という疑問を思いついたとしましょう。これは面白い疑問であり、何かの企画の種になりそうなアイデアでもあります。でもって、こうした疑問を思いつくときは、まっさらな状態というよりも、自分なりの考えの方向性が(あるいはその萌芽が)潜んでいるものです。だからこそ、その問いに面白さを感じるのです。

とは言え、それはまだ完全な形にはなっていません。これからの思考によってはいくらでも変化していくものです。

こうしたアイデアに関しては、一度他の人と共有しておき、それらの人たちが提出する「ノートブックとは、○○である」という意見に触れておくと、狭い路地に嵌り込むのを避けられるかもしれません。あるいは、アイデアの「化学反応」のようなものが起きて、まったく新しい方向性が見出せるかもしれません。

デジタルツールにおいては、情報共有は簡単に行えますので、デジタル・ネット時代のアイデア育成術として有益な方法ではあるでしょう。でもって、おそらくデジタルツール以前の作家やライターさんも、仲間や身内や編集さんと雑談を交わし、その中でアイデアを育んでいたことはたくさんあっただろうと推測します。その現代版として位置づけられるかもしれません。

課題があるとすれば、どのアイデアを内側に置いておき、どのアイデアを外側に出すのかの基準をいかに設定するのかと、どのような人たちとアイデアを共有するのかの設定が難しいところでしょう。特に後者は、「誰でもいい」というわけではまずないので、そのあたりの「場」の作り方が一つの問題にはなってきそうです。

〜〜〜字数制限の厳しさ〜〜〜

諸処の事情で、今「エブリスタ」という小説投稿サイトを使っているのですが、そのサイトでは一つの章あたり1000字という制限があります。

おそらくスマートフォンで閲覧されること(モバイル消費と呼びましょう)を念頭においた機能制限なのでしょう。隙間時間にサクサク読んでいける文字数がおそらく1000字程度なのだと推測します。

その理屈は一応わかるものの、書く方に回ると、この制限がけっこうきつく出てきます。私はブログやメルマガを含めて、だいたい一つの原稿を2000字で書いていて、言い換えれば、2000字の枠の中で、文章の流れを作っています。

で、最初1000字制限に気がつかずにいつものように書き出してしまい、いざ投稿する段になって、「あれ、入らない……」という悲惨な状況になってしまいました。

簡単に予想できる通り、2000字の枠で流れを作った小説を、1000字に区切ると非常に収まりが悪くなります。ものすごく中途半端ところで文章が切れてしまうのです。

連載小説というのは、冒頭につかみがあり、次に盛り上がりがあって、最後に強い引きを作って、次章への動線を作ることが必要ですから、尻切れトンボのような1000字ではまったく力がありません。困りました。

というわけで、苦心して書き直し、800字程度を一つのブロックして扱うようにしています。メディアの制約に合わせた「改稿」です。

ただ、そうなると、物語のテンポというのは変わってしまいます。自分が当初想定していたものは、随分とズレているのです。となると、字数制限なしバージョンもちょっと書いてみたくなりました。それを書き上げて、二つを比較して読んでみるのも面白そうです。

それにしても、文章を書くというのは、本当に難しいですね。そこには常にメディア的制約があり、書き手はその制約を念頭に置いて文章を書かなければなりません。さらに、読み手の体験もイメージして、物語のフレームを構築していかなければなりません。むろんそれが面白さでもあります。

〜〜〜≪差異とイテレーション≫〜〜〜

先週のR-styleでは、≪差異とイテレーション≫というテーマで6つの記事を書きました。それぞれの記事には、「連作」というほどのつながりはなく、せいぜい断片集くらいの位置づけです。

で、一連の記事ではいろいろな対象について具体的/抽象的に、実際的/寓話的に語っているのですが、一つ分かったことがあります。私が最終的にやりたいのは、たとえばタスク管理ならタスク管理についてのみ言及することではなく、タスク管理とノート術と思考術を越境し、さらに統合して眺めるような一つ上の階層から何かを語ることです。

いつもはだいたい「テーマ」という枠組みがあり、それに応じて書くことを選定(剪定)するのですが、≪差異とイテレーション≫ではあえてその括りを設けず、「差異」について思いついたことを存分に書き並べました。これが非常に楽しかったのです。

もちろん個々の要素を語るためには、まずそれぞれの要素について地盤を踏み固めることが必要ですが、それが終わったら一つ上の階層からいろいろと語ってみたいと思います。おそらくそれが、40歳以降の私の仕事の指針になりそうな予感があります。

〜〜〜Q〜〜〜

さて、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. これまで一度も読んだことのない作家の本(小説)を手に取るときは、どんなときですか。

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週も「考える」コンテンツをお楽しみくださいませ。

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2018/02/19 384号の目次
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○BizArts 3rd 『中裁量のタスク管理ポイント』
 タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。

○SS 「無口なスマートスピーカー」
 読み切りのショートショートです。

○ノンマケ・マーケシング 「もしNovelJamに出ていたとしたら」
 週替わり連載。今回は、NovelJamを肴にして、マーケターでない人向けのマーケティング話を。

○Rashitaの本棚 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』(カレン・フェラン)
 Rashitaの本棚から一冊紹介するコーナー。新刊あり古本あり。

○物書きエッセイ 「恐怖と向き合う」
 物を書くことや考えることについてのエッセイです。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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