「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」なのかもしれない
こんにちは。ラシンの茂木です。珍しく惹きのあるタイトルにしてみましたが、私が考えたキャッチーなコピーではなく、最近読んだ本の中の一章のタイトルです。
本のタイトルは
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?
〜認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策〜
です。
著者は認知科学と言語の第一人者とされる、慶應義塾大学の今井むつみ教授です。
この本を手に取ったきっかけは、Xでフォローしているビジネスインフルエンサーのおすすめ本として投稿されていたからというのと、認知行動療法を専門とされているお客様から聴いた話が面白かったこともあり、「認知科学」「心理学」から"コミュニケーション"を捉えるということに興味を持ったからです。
また自分自身マネージャーというポジションにあり、プレイヤーとしてもお客様との商談、打ち合わせを日常で行っています。
このような仕事の特性上、メンバーや上司、お客様(規模感も様々)、パートナー様など、ありとあらゆる立場の人とコミュニケーションを取る機会が多い状況です。その中で自分が相手へ一生懸命に伝えているのに、相手にはうまく伝わっていないのではないか、何かが刺さっていないのではないかと、日々自分のコミュニケーションに課題を感じることも多くあります。
何回も説明しているのに、伝えているのに、この人には伝わるけど、この人には伝わらない。誰しもそんな経験をしたことがある、現在進行形でしている方もいるのではないでしょうか。
そんな中、「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?
という「まさに!」というタイトルが心に響き、手に取ることになりました。
ここからが本題ですが、
人と人は話せばわかり合えるものなのでしょうか?
自分はこれまで伝え方や、伝えるタイミングを工夫し、時間をかければ基本的にはわかり合えるものだと信じてきました。
ただこの本で問うているのは、伝えたい物事が正しく伝わっていないのは、言い方や説明不足のせいだけではないのかもしれないということ。
この本では人と人のコミュニケーションの間に齟齬が生じる大きな原因として「スキーマ」という概念に着目しています。
「スキーマ」と言われてもなかなかピンとこないかもしれないですが、もう少し分かりやすい表現を今井さんは使っていました。
スキーマとは自分で作った暗黙の知識の塊
だそうです。
人と人のコミュニケーションにおいて良く見られる会話の一例として、A君とB君のやりとりがあるとします。
「普通に考えたらわかるよね?」という言葉が交わされることがありますが、実際にはA君とB君の間での「普通」の概念が異なることがよくあります。これがスキーマの特性です。
仕事をしている中でも、プライベートにおいて友人や家族、パートナーとコミュニケーションを取る際にも、どれだけ仲が良く気が合うと思っている人でも、100%分かり合うことは難しい、むしろ無理であるとこの本を通じて理解しました。特に、年齢が離れていたり、業種やビジネススタイルが異なったり、役職やポジションが違ったりすると、自分とは異なる立ち位置にいる人とのコミュニケーションが噛み合わないことは必然です。この前提を踏まえて、人とのコミュニケーションを始めることが重要であることを再認識しました。
視点が異なる状態でただ同じ議論を繰り返していても、お互いに相容れない結果となります。何かを信じれば信じるほど、自分が論理的であると思えば思うほど、他の人の意見が「間違っている」と感じてしまうものです。
建設的なコミュニケーションにおいて大切なのは、相手に理解してもらうために手を変え品を変えて丁寧に説明することではなく、それぞれがどのような視点からその意見を述べているのかを考え、傾聴し、それぞれの懸念を払拭していくことだと思います。
自分とは異なる考えを学び、自分が持つ偏見を見つめながら、心地よいコミュニケーションができるよう、精進してまいります!
最後までお読みいただきありがとうございました!