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『銀河の死なない子供たちへ』レビュー

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銀河の死なない子供たちへ

施川 ユウキ

『バーナード嬢曰く。』の施川 ユウキさんが描く、とにかく死なない、
人類滅亡後の地球に残された、繰り返しますがとにかく死なない子供たちのお話です。

イエーイ マイクチェック ワンツー

いきなりライムが刻まれ、死なない子供、ラップ大好き娘のπ(パイ)が登場。これがまた本当に死なない。一万年もの時を経ても同じ星空を眺めている少女。
巨大な牛(?)に踏まれても、津波に巻き込まれ、クジラにのみ込まれても平然と生きている、死なない彼女。

冒頭から20頁にわたって、未来の地球の生き物や激しく活動する大自然と、ただただ無為に時を浪費する少女が描かれます。
死ぬ心配のない彼女はまったくの天衣無縫というか天真爛漫で、無邪気で、ある意味(我々、限りある命の持ち主からすると)とても残酷です。

そんな彼女は何を思って、その大きな瞳で、世界を、星々を眺めているのでしょうか。

πの歌う宮沢賢治の『星めぐりの歌』とともに、ようやくタイトル『銀河の死なない子供たちへ』が出てきます。きっと、宮沢賢治の生きていた時代と、πのいる未来の地球で、変わらないものは星の光ぐらいなのでしょう。

そして、子供たちのもう片方、弟のマッキと、ママが登場します。ママさんの登場はこれまたインパクト大。子供たちだけでなく、ママも途方もない不死性の持ち主のようです。

そして、マッキが読んでいる漫画は、手塚治虫の『火の鳥 未来編』というところがなんとも示唆的です。(『火の鳥 未来編』は、ものすごくおおざっぱに言ってしまうと、永遠に死ねない主人公のお話。なのですから……)

「不死」という、だれもが憧れて、また考えさせられるテーマを、非常にうまく描いています。ページいっぱいに使った星空や、インパクトある表現の連続は、読者に「生と死」について深く考えることをつきつけてくるのです。

人間なら、いいえ、生物なら、どんな生き物でも一生を通して必ず一度は経験しなくてはならない、生命のもっとも根幹の出来事。命とはなんぞや、生きるとは、死ぬとは。

そして、けっして死なない子供たちに愛する者が、普通の、死ぬさだめの命を持つ者が現れた時、永久に生きることを強いられた、『死なない・死ねない子供たち』はいかなる選択をするのか……。

上下巻の二冊で描かれる哲学的ともいえるストーリーは大変分かりやすく、そして感動的でした。

pixivコミックで1~2話は無料で読めますので、まず試し読みをおすすめです。これだけでもインパクトのすごさを感じてもらえると思います。

もともとWebコミックだったみたいですね。(下巻のラストは描きおろしだそうなので、Web上では読めません。ぜひ買って読んでみましょう、感動的ですよー♪)

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