『クオリアと人工意識』レビュー
『クオリアと人工意識』
茂木健一郎(著)
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よくテレビ等でちょっと変わった芸能人あつかい(?)されてしまっている脳科学者の茂木健一郎さんですが、さすが専門分野ではしっかり研究されていて、高度な内容をとてもわかりやすく解説してくれています。
1997年に発売された前著『脳とクオリア』では、ヒトの心や意識がどう脳で処理されているのかといった事柄や、意識の鍵であるクオリアという哲学について書かれていました。
その後、コンピュータAIの発達で、チェスや囲碁の世界チャンピオンにコンピュータが勝利するなどの事件(?)が相次いだのはご存じの通り。
これらを受けて、本書では、前著からさらにつっこんで、知性や意識が、人間の脳以外のハードウェア(コンピュータ)で発生しうるのかどうか、その場合に何がおこるのか、そもそも意識って? 知性ってなに? という点をより現代的にぐぐぐっと掘り下げ、人工の計算機械であるコンピュータを絡めた話題を中心に解説しています。
ところで、そもそも意識というやつは人間の脳(や、高度な動物の脳)にしか宿らないのでしょうか? 犬や猫も意識はありそう。哺乳類以外では? 昆虫には意識はないのか?
そして、囲碁などの限定分野で人間を超える性能を発揮してきたコンピュータには意識は発生しえないのか?
虫に意識があるとするならば、機械装置では? たとえばサーモスタットにも意識はあるのか?
単純な反射・反応機構には意識はないとするなら、どのくらい複雑なシステムになれば意識は宿れるのか?
どういう条件が意識を発生(創発)させるのか。
こうした疑問に、一方は哲学から、他方はコンピュータや脳科学の方向から光を当て、茂木さんの研究テーマである【クオリア】の探求につなげていきます。
クオリアという哲学用語は、おおざっぱに言ってしまえば、【事物とは独立して存在する普遍的な本質】とのこと。
このクオリアが、物理的な物体である人の脳というハードウェアと、心・精神という実体のないものをつないでいるのではないかと氏は考えます。
物体と情報、よく言うアトムとビットのはざまにある架け橋の「何か」。精神や心、ヒトの、いわゆる魂を成り立たせている「何か」を、茂木さんは【クオリア】としているわけです。
さて、いまあえて「ヒトの」と書きましたが、じゃあ、これがコンピュータで再現できるのか。コンピュータの内部に【クオリア】は生まれるのか。
人工意識は作れるのか、ヒトから意識をコピーすることは?
などなど、どんどん膨れ上がる疑問への茂木さん流の答えや、考えの道筋が本書では随所に示されています。
いろんなSFのネタ本にも使えそうですw
(いまのところ、まだ、生体であるはずの?)我々の脳組織を刺激してくれる、たいへん興味深い本なのでした。
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