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『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』レビュー

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『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー) 

大森望(編)

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みんな大好きタイムトラベル。

タイムマシン物やタイムスリップ物、いわゆる『時間SF』。SFの定番ジャンルですね~。

もちろん私も大好きなんですがw

ただ、海外(特にアメリカ)では宇宙物のSFのほうが大人気で、アメリカで人気投票とかをすると宇宙SFのほうが常に上位を占めるのだそうです。

なんでか日本のほうがこういった時間SFは人気なのだそう。

広大な大宇宙で冒険活劇みたいなののほうがアメリカ人好みなのかもしれませんね。(そういえばスペースオペラって言葉はあってもタイムオペラってないもんねえ(あったらそれはそれで面白そうだけどw)

人間同士のすれ違いや葛藤や、越えられない時という壁を越えてしまうあたり、けっこうラブロマンス向きでウェットな日本人のお口に合うのかもしれませんね。

さてさて、この本ですが、そんな日本人が大好物なタイムトラベルものをたくさん集めたアンソロジーです。

まず『あなたの人生の物語』(映画『メッセージ』の原作)のテッド・チャンの『商人と錬金術師の門』が冒頭に収められています。そこから、ラスト、表題作のF.M.バズビイ『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』まで13作の短編が詰まっています。

最初のテッドちゃんじゃなかったテッド・チャンの『商人と錬金術師の門』がもう最高にすばらしいです。
アラビアン・ナイトの世界でのハードSFですよ!!
着想も素晴らしいし語り口も良いし、なにしろタイムSF!
いわゆるタイム・パラドックスがうまいことお話のなかに仕込まれていて、教訓的だったりちゃっかりロマンスっぽい展開もあって、詰め込まれているのにそれがまたよくまとまっていて、もう名人芸な味わい。超よかったです。さすがですわ~。
このテッド・チャンさん、編者の大森望さんの解説によると、六週間のSF創作講座合宿で書いたデビュー短編『バビロンの塔』でいきなりネビュラ賞を受賞、その後もごぞんじ『あなたの人生の物語』や『地獄とは神の不在なり』でもネビュラ賞やヒューゴー賞など、SFの権威ある賞の常連となり、あのグレッグ・イーガンと並んで現代最高のSF作家とみなされている、にもかかわらず、デビュー後20年間で発表した作品はわずかに中短編12編のみなのだそう。
つまり、それだけ練り込まれた優秀な作品が多いってことなのでしょうね。この『商人と錬金術師の門』も、ネタ・味わい・語り口、どれをとっても一級品、おすすめできる逸品なのです。

もうこれ↑でかなり私の中では元を取った感があるアンソロジーなのですがw
それ以外にもトンデモナイ発想の奇想天外もの、ナンセンスな時間旅行ものから良い雰囲気のラブロマンスもの(やっぱりタイムSFにはラブロマンスが似合います)までいろんなタイムSFの数々で、どの話も魅了されます。

最期にずっとなんでこんなタイトルなんだろうって気になっていた表題作『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』も、読んで見て、なるほどーそういうことなのねー。と納得&堪能いたしました。

時間SF好きなら、読んで見て損はないアンソロジーだとおもいます。まる。

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