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『テルジーの冒険』レビュー

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『テルジーの冒険』

ジェイムズ・H・シュミッツ(著)/鎌田三平 (訳)

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前回紹介したこちら、

『チックタックとわたし』はこのテルジーの冒険シリーズ(と言っておきましょう)の第一部。
そこから始まる天才少女の冒険物語です。

時ははるか未来。人類は銀河に広くいきわたり、さまざまな星域を植民地にして独自の社会形態をつくっています。その星々は〈ハブ連邦〉という大きな枠組みで統治されています。この、〈ハブ連邦〉の政策は基本不干渉であって、よほど大きな(外敵の侵略とか)がない限りはめったなことでは動きません。
動かない、はず、なのですが、たまーにめったなことが起こるからお話が盛り上がるわけで……。
この『テルジーの冒険』でも、『チックタックとわたし』直後にその連邦の影が、主人公テルジー(の精神に)に密かに接触してきます。

実は、テルジーは第一部の猫型生物チックタックとの交感によって、ゼノテレパス(異種間精神感応者)としてサイ能力に目覚めてしまいました。

なお、第一部のパートナーアニマル(?)は大型の猫型生物でしたが、第二部は(これまた慣れていない相手にはめちゃくちゃ狂暴になる)大型の犬型生物になります。猫SFかとおもったら犬SFでもあるというお得な構成(?)ですw

どうやらこのサイ能力が、連邦心理学局という組織に目をつけられてしまった。というわけなのですね。
しかし、前にも書いたとおりテルジーは天才少女。その心理学局の仕掛けた精神的な罠も見抜き、持てる知能とサイ能力(と、それなりに良いところの娘なので、家の社会的地位など)を上手く使いこなし、秘密裡に自分を守り、かつ殺人事件に巻き込まれそうな友人も助けようとします。

原題は ”The Universe Against Her”(彼女に敵対する宇宙)というなんともものものしいタイトル。巨大な〈ハブ連邦〉vs少女。という構図がタイトルからも見受けられる、そんな大冒険なのです。

余談ですが、実は、わたくし、このテルジーちゃんと同い年ぐらいにこの本を最初に読んでわくどきしていたのですが、その時には(今よりもっとずっとおバカだったのでw) Against という英単語を Agent とうっかり読み間違えていまして、「原書は『彼女は宇宙エージェント』ってタイトルなんだ。きっと宇宙連邦のエージェントになるお話なのね、かっこいい!」って勝手に勘違いしていましたw
実際、連邦心理学局も優秀なサイ能力者を欲しているし、連邦全体と自分の周りという程度の差こそあれ、同じ「正しいこと」の方向を向いているので、最初は反目していてもきっと手を組んでもっと大きな敵とたたかうのねー。なんて想像して読んでいたのです・・・w
(未訳ですが、本国で出ている2巻目、3巻目ではそのような方向になっていそうな気もするんですけどねー、続刊でないものかなあ?w)

ちなみにこれが原書の表紙

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目、赤く光ってるし! 怖そうな獣使役してるし!!  これじゃたしかにユニバースと敵対していそうww

それが、日本ではこれですw

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あらかわいいw やっぱり、こっちの表紙のほうが手に取りやすいですねw

もひとつ余談ですが、シュミッツと言えば日本で有名なのは『惑星カレスの魔女』です。なぜって表紙がほら、

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宮崎駿さんなのです。

なんで3冊あるかって? そりゃあ布教用と保存用と読む用ってやつですw
こちらもまた機会があったら紹介しますねー。
なお、まんなかの帯付きのは創元SF文庫、両脇のは新潮文庫となっています。

新潮文庫版は『テルジーの冒険』の前に出版されていましたが、今は両方とも絶版のようです。。創元さんがテルジーも引き取って、次いでに続刊もだしてくれたらありがたいのですけど。。。どうでしょうねえ。。無理かなあ……。

とまあ、そんなわけで、猫SF好きにも、犬SF好きにも、サイキック少女好きにも、(そしてそんな我が娘をがっつり信じて大人世界のサポートをするカッコいいパパさん好きにも)安心しておすすめできる、さわやかな冒険SFです。

たぶん(カレスの魔女よりは)古本で安くゲットできると思います。難しいことを考えずに楽しく読めるSFです。おすすめー☆


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