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らせんの本棚

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SF、ファンタジー、実用書からマンガ、画集、絵本などなど、アトランダムに紹介するレビュー集。神楽坂らせんが読んで「グッ!」と来た本を不定期に紹介していきます。もちろんネタバレはな… もっと読む
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#ブックレビュー

『われらはレギオン4』レビュー

『われらはレギオン4』上・下 驚異のシリンダー世界 デニス・E・テイラー(著)/金子浩(訳)📚 ↑の1・2・3の続き、第四巻。です。今回は上下巻の二冊構成! 📚 宇宙探査機集合体としてよみがえり、光電子コア・マトリクスのコンピュータ頭脳に生まれ変わったボブたち(複数形)。 タイトルの『われらはレギオン』の通り、彼らは集合体。もともとのオリジナル・ボブの複製たちです。 銀河に広がっていくボブのネットワークは半径100光年におよび、その集合体を指してボブの宇宙と自称していま

マーダーボット・ダイアリー『逃亡テレメトリー』レビュー

マーダーボット・ダイアリー『逃亡テレメトリー』マーサ・ウェルズ(著) / 中原尚哉(翻訳) 📚 ( ゚∀゚)o彡゜弊機! 弊機!  というわけで、個人的大人気の弊機ちゃんが活躍するマーダーボット・ダイアリーの最新巻三作目です。 第一作は ↑で、第二作は ↑で、それぞれレビューしています。(できれば↑もどーぞ♪) 三作目である今回は、表題作『逃亡テレメトリー』と、『義務』、『ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地』の二短編を収録しています。

読書の日(10月27日)と読書週間(10月27日~11月9日)

何でも今日(10/27)は読書の日らしいですよー。何の語呂合わせなのかなとおもったけれど、読書週間の第一日目だから、ということみたいですねw とゆーわけで、今日は ↑の紹介ですw つまり、 ↑のマガジンのご紹介。 だいぶ前からこうした、ワタシが読んで見て「ぐっ」と来た本の紹介をしていまして、先ほどの、始めのリンクは、その600冊目を超えたあたりでの紹介です。 で、今は、そこからまた100冊超えて(このマガジンでは現在+131本)いるわけです。ぜんぶで大体730冊ぐ

マーダーボット・ダイアリー『ネットワーク・エフェクト』レビュー

マーダーボット・ダイアリー 『ネットワーク・エフェクト』 マーサ・ウェルズ(著/文), 中原 尚哉(翻訳) ◇ きましたよー! 弊機! マーダーボット・ダイアリーの続編です! 前編はこちら のレビューで語っていますのでまずご覧いただくとして、前編(マーダーボット・ダイアリー)で弊機ちゃんについで私の中で大人気のART(不愉快千万な調査船)さんが再登場! それも、すごい役どころで!! さて、どのくらいすごい役どころかというと、うーん、ネタバレになりかねないところで苦し

『マーダーボット・ダイアリー』レビュー

『マーダーボット・ダイアリー』(上・下) マーサ・ウェルズ(著/文), 中原 尚哉(翻訳) ◇ お仕事されてる人は自分の会社のことをよく「弊社」って言いますよね。 弊社とは、自分の属する社の謙称のこと。 自分の会社のことを示す際に使用するへりくだった表現、謙譲語である。 弊社の語は、相手の会社に対して自社が格下であるというニュアンスを含んでおり、社外の人間に対して「我々の会社」と言いたい時に使用する表現である。(Weblio辞書より) と、あるとおり、相手の会社よ

『息吹』レビュー

『息吹』テッド・チャン (著) / 大森望 (翻訳) ◇ 現代最高のSF作家は誰かと聞かれたら、なかなか答え辛いところですけれど、すくなくともベストテンの中には絶対はいっていると思うのがこのテッド・チャンさま。 驚くべくことに、この長編流行りの時代に、ほぼ短編だけで勝負されていて、しかもとっても寡作な方。この『息吹』は第二短編集なんですが、第一短編集の『あなたの人生の物語』から17年でようやく二冊目。という超寡作。 だのに、出す短編が常にSFの世界的な賞を軒並み受賞し

『火星へ』レビュー

『火星へ』上・下 メアリ・ロビネット・コワル (著) / 酒井昭伸 (翻訳) ――― ↑で『宇宙へ』向かった初の女性宇宙飛行士〈レディ・アストロノート〉シリーズの続編です。 ――― 1960年代初頭。前作、『宇宙へ』で地球に衝突し未曾有の大被害を引き起こした〈巨大隕石〉の影響は、いったんは落ち着いてくれたものの、大氣中に広まった塵による温室効果で遠からず地球は死の星になってしまうことは確実視されていました。 人類存続のためには速やかに宇宙へ、そして他の惑星へ移住し

『Arc アーク』レビュー

『Arc アーク ベスト・オブ・ケン・リュウ』 ケン・リュウ(著/文) : 古沢嘉通(翻訳) ◇ あのケン・リュウさまのベスト短編集です! ケン・リュウの本はすでに沢山の邦訳があるので、読んだことのあるお話も多いと思いますが(私もほぼ既読でした、が)それでも、いま、あらためて読みたくなる名作中の名作がぎっしりはいっています。 実はこれ、映画のプロモーション用(だとおもう)の短編集のようですね。表題短編の『Arc アーク』が、6/25に石川慶監督作品として公開される

『三体』レビュー

『三体』Ⅰ劉 慈欣(著) / 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ(翻訳) / 立原 透耶(監修) 『三体』Ⅱ 黒暗森林(上・下) 劉 慈欣(著) / 大森 望, 立原 透耶, 上原 かおり, 泊 功(翻訳) 『三体』Ⅲ 死神永生(上・下)劉 慈欣(著) / 大森 望・ワン チャイ・光吉さくら・泊 功(翻訳) ――― 全五冊。まるっとレビュー、ネタバレ無しでいきます。 ☆ ☆ ☆ ようやく! 三体三部作完結(の日本語版)です!! いやあ、Ⅰのころからすご

『いさましいちびのトースター』&『いさましいちびのトースター火星へ行く』レビュー

『いさましいちびのトースター』 『いさましいちびのトースター火星へ行く』 トーマス・M. ディッシュ (著) / 浅倉 久志 (翻訳) / 吾妻ひでお(イラスト) ◇ 今回は2本立てのレビューです。 タイトル通り続き物。 そもそもタイトルで出オチ感満載なのですがw (もちろんグリム童話『いさましいちびの仕立て屋さん』がタイトル元ですね) グリム童話になぞらえていますが、これがまたしっかりした童話になっています。いちおう、子供向けなのですが、十分オトナが読んでも楽

『光の塔』レビュー

『光の塔』今日泊 亜蘭(著) ◇ 読みにくいけれどなんだか洒落た語感のある著者名は(きょうどまり あらん)と読みます。 あの伝説の同人誌「宇宙塵」に設立より参加し、長い間日本のSF界の最長老として知られた御方です。(2008年に97歳で没。南無><)そして、その「宇宙塵」に連載され、1962年(昭和37年)に刊行されたのが本書。 これ、知る人ぞ知る国産本格長編SFの第一号なのです。 もちろん、何をもって日本SF第一号とするかとかいろいろ議論はあるとおもいます。戦前

『ブラックホールの飼い方』レビュー

『ブラックホールの飼い方』 ミシェル・クエヴァス(著) / 杉田 七重(訳) ――― なんと、あのブラックホールをペットにしてしまった女の子のお話です。 ブラックホールって、アレですね、極めて高密度で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体。そう、白鳥座X-1とか、我々の天の川銀河の中心にあるのではないかとされている、アレです。 それが、暗い夜道で11歳の科学・天文好きの女の子、ステラの後ろをついてきちゃうのです。 それを、恐ろしがりなが

『「色のふしぎ」と不思議な社会』レビュー

『「色のふしぎ」と不思議な社会』 2020年代の「色覚」原論 川端裕人(著) ◇ 『夏のロケット』、『川の名前』、『銀河のワールドカップ』、『雲の王』に『青い海の宇宙港』……などなど、ワタシ的に超ツボな、ぐっとくる小説の数々を書かれている川端裕人さんなのですが、最近はノンフィクションも多く出されています。ナショナルジオグラフィックで『「研究室」に行ってみた。』なんて連載もこなされていて、さすがの一言。 ◇ さて、本書は、そんな川端裕人さんがここ数年取り組まれていた

『一人で歩いていった猫』レビュー

『一人で歩いていった猫』 大原まり子(著) ◇ 前回紹介した の前に出版された中短編集。 タイトルの『一人で歩いていった猫』が1980年の第6回ハヤカワ・SFコンテストに佳作入選しデビューしたという、大原まり子さんのデビュー本でもあります。 表題作含め収録4作品すべてが、いわゆる「大原まり子の未来史」、と言われる世界の物語。この世界感がなかなか深いのですよー。 今回は語りたいことたくさんなので、まとめて一気に行きますねー。 ◇ 『一人で歩いていった猫』 上に書