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『光の塔』レビュー

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『光の塔』

今日泊 亜蘭(著)

読みにくいけれどなんだか洒落た語感のある著者名は(きょうどまり あらん)と読みます。
あの伝説の同人誌「宇宙塵」に設立より参加し、長い間日本のSF界の最長老として知られた御方です。(2008年に97歳で没。南無><)そして、その「宇宙塵」に連載され、1962年(昭和37年)に刊行されたのが本書。

これ、知る人ぞ知る国産本格長編SFの第一号なのです。

もちろん、何をもって日本SF第一号とするかとかいろいろ議論はあるとおもいます。戦前には海野十三さんが冒険SF小説を書かれておられましたし、戦後も阿部公房さんらがSFやそれっぽい怪奇ものを書かれていました。(千年前にはかぐや姫が書かれていたしねw)
が、実際に読んで見てわかりました。まさしく、これこそが本当の本格SFの第一号だと。

正直、私も最初は古典SFのお勉強のつもりで読み始めたのです。が、なんとこれがめちゃくちゃ面白い!
ここまで完成度の高いSF小説があの時代に書かれていたなんて……。驚きを通り越して感動しつつ、夢中でページをめくりましたよ。
どゥせ古臭ィ本だろゥなんて思ッテ今まで手に取らずにいたアタシの馬鹿馬鹿ッ!!って感ンじなのです。
(↑こういうヘンなカナ交じりの口語体って、SF界では野田昌弘大元帥のお家芸だと思っていましたが、そのさらに先輩の今日泊亜蘭先生の流派(?)だったとは知りませんでした。これまたもの知らずの馬鹿馬鹿ッ!ってかんじです><)
しかも、こうした文体は何も考えなしにノリで書かれていたわけではありません、今日泊先生は言語学の造詣が深く、在野の言語学者としても知られ、何と30ヶ国語以上の言葉を操られたそう。江戸っ子のべらんめぇ口調や講談師の講談調をふまえつつ、言語学・社会学的に考察した未来での言葉、として至極真面目に書き、実際にそうした言葉に対する講釈を作中人物にさせています。(それがまたストーリーにかかわってくるところがまた上手い!)
何しろ、星新一さんをして「正しい文章である」と言わしめています。
また、「書き飛ばした文章ではなく、科学小説の手法が借りものではなく生かされている」とも。

ほんとに、まったく古臭く感じません。むしろ今っぽい。そして、読みやすく、当然ですがとてつもなく日本っぽいこの感じ。なんだかハリウッドのSF映画を見た(ある意味見飽きた)後で『シン・ゴジラ』を見て日本映画の底ヂカラを感じた時のようなコーフンです。

(関係ないですけど庵野監督ぜったいこの本好きだとおもいます。もしかして愛読していたかも? 言い回しや雰囲気に通じるところ結構ある気がしますわーw)

こういう言い方をするとアレですが、今の日本のSFの源流にして原点にして、そして、いまだ最高峰に君臨する圧倒的な面白さの本です。

すべてのSF好きに、SFもう飽きたわ~って人にも、ぜひぜひ読んでほしい大傑作なのでした。ちょーおすすめです!

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