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マーダーボット・ダイアリー『逃亡テレメトリー』レビュー

マーダーボット・ダイアリー『逃亡テレメトリー』

マーサ・ウェルズ(著) / 中原尚哉(翻訳)

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( ゚∀゚)o彡゜弊機へいき! 弊機へいき! 
というわけで、個人的大人気の弊機へいきちゃんが活躍するマーダーボット・ダイアリーの最新巻三作目です。

第一作は

↑で、第二作は

↑で、それぞれレビューしています。(できれば↑もどーぞ♪)

三作目である今回は、表題作『逃亡テレメトリー』と、『義務』、『ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地』の二短編を収録しています。

まず表題作の『逃亡テレメトリー』は、第一作めのあと、ブリザベーション連合という人権意識の非常に高い(とはいえ、半機械である弊機のような警備ユニットにはまだ人間ほどには権利がみとめられていない)社会におちついた弊機が、不可解な殺人事件に巻き込まれ、探偵のように事件の謎を解いていくというお話。
弊機おとくいのハッキング技術を使えば容易に解明できる謎なのでしょうけれど、例によって弊機の危険性を訴える人間側の介入によって得意技は軒並み禁止されている状況。
そんな、弊機にとってはまるで手足を縛られたような形で難事件に挑むわけです。で、捜査のバディをいやいやながら務めるのが、もっぱら弊機の危険性を訴えたいほうの人間である上級警備局員という構図。あんな恐ろしい殺人機械と同じ空気を呼吸するのも耐え難いわ。系の、(現実の戦争を知らない系の)反戦平和主義者です。
はてさて、(自称)人間嫌いの弊機は、脆弱な人間を守るという枷までもはめられつつ、難事件を解決にみちびき、弊機嫌いの人間の認識を変えることができるのでしょうか。

人間たちの煩わしい(くだらない)殺人事件騒動に巻き込まれるより、どこか倉庫の隅で連続ドラマの視聴に耽溺したい、例によって屈折した厭世観まるだしの弊機の語り口が魅力的な未来的SF推理小説ディテクティブなのでありました。

短編の『義務』は、まだブリザベーション連合の指導者メンサ―に出会う前の、自分自身のプロテクトをハッキングによって破った直後の弊機のエピソード。
『ホーム――それは居住施設、有効範囲、生態的地位、あるいは陣地』は、ブリザベーション連合におちついた直後、メンサ―視点から語られる弊機とのエピソードです。
どちらも弊機と、それをとりまく未来世界の魅力を味わえる一品。
表題作とあわせて、そして、さらに前作、前々作とあわせて読めば、たっぷり浸れること請け合いですよー♪

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このマーダーボット・ダイアリー・シリーズは、ヒューゴー賞のシリーズ部門も受賞。著者のマーサ・ウェルズさんはさらに続けて本シリーズの三作をすでに出版社と契約して執筆をすすめているそう。
我々読者もまだまだ弊機ちゃんの語りを味わえそうです。たのしみ~☆

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