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有給休暇とタクシー乗車のテンションについて思うこと

有給休暇。
ざっくりと適当なニュアンスで言うならば、働いてもいないのに給料をもらえる休暇だ。

若い頃は(何という素敵なシステムなんだ)と感心したものだが、歳を重ねるにつれて感動も薄れてくる。
(こんなに一生懸命働いてるんだからそのくらいの仕組みがあって然るべき)などと擦れた考えにもなってくる。

それはさておき。


7月も終わろうかという日曜日。
どうも娘が咳込んでいる。
少しではあるが。
熱は無いものの少し気になったので休日当番医を探し、車で15分ほどの小児科へ。

「まぁ、風邪でしょう」との診断を受け、薬を処方してもらい帰宅、様子を見る。


翌朝、多少咳は残っているものの発熱もなく、小児科にも登園可能とのお墨付きを貰っているので保育園へ。

もしも園からの呼び出しがあった場合は、仕事の具合的に僕が迎えに行くという段取りだけは決めてそれぞれ出勤する。

まぁ大丈夫だろうと高を括っている時に限ってそうはいかないのが世の常だ。
昼過ぎくらいに保育園から「38.8度の発熱」との電話が入る。

仕事を中断し会社に車を戻し、帰路に着く。
保育園から近い妻の職場にチャイルドシートを装備した自家用車があるため、地下鉄を降りタクシーで向かう。
駐車場の近くには分かりやすい目印として大きな病院があるため、運転手にはその名前を告げる。

「〇〇病院まで!お願いします!」


…やってしまった。

急がねばという少しの焦り、数少ないタクシーを灼熱地獄の中でようやく確保した高揚感からか、思いのほか声が大きく出ていたようだ。

言っておくが、その「〇〇病院」には用は無い。
目的地が近いというだけだ。
しかし、時すでに遅し。

背もたれ越しに、タクシー運転手の謎の使命感が漏れ出て来ている。
「承知しました
目には見えないが、確実に「!」が発声されている。
「!!」だったかもしれない。

いきなり乗り込んできた客が額に汗をかきながら大声で病院の名前を告げれば、それは何かしらの緊急事態だろう。
親が危篤なのだろうか。
それとも親友が運び込まれたのだろうか。

だが、僕はその「〇〇病院」には用は無い。

「前のタクシーを追ってくれ!」と言いながら警察手帳を出される場面が第1位だとすれば、その次くらいにはテンションの上がるシチュエーションだろう。

だが何度も言うが、その「〇〇病院」には用は無いのだ。
本当に申し訳ない。
子どもの体調は心配だが、生死の境は彷徨っていない。

今さら「その『〇〇病院』には用は無いっす。」とも言えないので、空気感だけは合わせることにした。
落ち着かない様子を醸し出しながらスマホに目を遣る。
(Yahoo!ニュースを閲覧)
早々にバッグから財布を出す。
(バーコード決済が使えることに気付き早々に戻す)

「お待たせしました!」とドリフト気味に実際はしていない停車したタクシーから3割増しのスピードで下車しつつ、4割増しのテンションで「助かりました、ありがとうございます!」と告げ、車両が走り去ったタイミングでゆっくりとした歩調に落とし、自分の車に向かう。
「お釣りは取っといて!」も付け足した方が良かったかとも思ったが、バーコード決済では難易度の高い芸当だろう。

保育園に到着し娘をチャイルドシートに乗せる。
多少顔は上気しているようだが、元気な様子。
ひと安心。


ついタクシーのくだりを長々と書いてしまったが、その後はお決まりのコースだ。
2日間熱が下がらず改めて受診しレントゲンを撮ると肺炎になっているとのこと。
妻と交代で有休を取りつつ、実家にも協力を仰ぎ、結果的に12日かけて体調を回復させ保育園に復帰した。
娘の体調が回復したことは本当に有難いのだが、お察しの通り僕も妻もこの間にガッツリと体調を崩す。
いわゆる「もらった」というやつだ。

念のため例の感染症の検査も受けたが陰性。
「だるいな…」と思いながら仕事をこなし、明日はようやく自分の休日となる。

ここで改めて「有給休暇」の定義を確認してみる。
厚生労働省によれば、

一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のこと

だそうだ。

心身を疲労し生活にゆとりがなくなったので、回復のために来週あたり有休でも取ろうかな、という気持ちが過ったが、次に呼び出しを喰らった時のために取っておこうと考え直す。


同僚と電話で雑談中、事の顛末と共に有休の理由を話すと「思うさん、ほんとイクメンだよね。偉いよね。」と言われ虫唾むしずが走る。

「いやー、そんなことないよぉー。」とは返したが、イクメンという言葉がとても苦手なのだ。
(↑自分の記事で恐縮だが、ぜひ御一読いただきたい)

自分の子どもの世話をして何がイクメンか。
勝手に気味の悪いラベリングをするな。

子どもの体調不良を理由に仕事を休むことは別に立派なことでもないし、ましてや他人にとやかく言われることでもない。
放っておいたら簡単に命を落としてしまうような生物の看病をすることは至極当然なことだろう。

シフト制やチーム要素の大きい仕事をされている方の場合は当てはまらない考え方だろうが、ほぼ単独行動・営業職の自分に限って言えば、仕事はスケジュール調整でどうにでもなるし、数日休んでも問題無い程度には利益も確保している。
ただ休んだというだけで文句を言われる筋合いはないし、仮に文句を言われるとすれば…それは日頃の自分の働きぶりを見つめ直した方が良いというバロメータなのかもしれない。
あくまで・・・・自分自身の話。気を悪くされた場合は申し訳ないが、貴方のことは言っていない。)

周囲の顔色を気にしすぎて集中力に欠けた仕事をするくらいなら、思い切って有休を取る。
行使して何の問題も無い権利なのだから。
家族や自分のために時間を使うことは悪いことではないよ、というお話。

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