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鳥かご鍵 19

月はデニムにシャツとシンプルだけど、
清潔感のある格好だった。

背が高く、筋肉質な体格に似合わない、
かわいい顔をしている。

月は私の隣に立って、
「思ってたより小さいね。」と言ったので、
私は、
「思っていたより大きいね。」と言った。

「じゃ行こう!
10分くらい歩いたところにカフェがあるんだ。」

「うんわかった。」

私達は並んであるいた。

私はドキドキしていた。

お互いの最寄りの駅の話し、
天気の話し、洋服の話しと色々な話しをした、
私達は始めて会ったのに、
まるで昔からの知り合いのようだった。

細い路地を少し入ったところに、
そのカフェはあった。

「かわいい、カフェ!」

「ランチもおいしいんだよ。」と月が言った。

私達は中に入った。

落ち着いたカフェで初デートにはぴったりの場所だった。

私たちは窓際のカウンター席に座った。
向かい合って座るのは恥ずかしかったからだ。

「ランチでいいよね、嫌いな物ある?」

「ランチでいいよ、嫌いなものは無いです。」

月は店員さんを呼んで、

「すみません、ランチ2つ」と注文した。

月は皮のブレスレットをしていた。
でも私はその話しはしなかった。

月はおしゃべりでカフェで働いていること、
釣りや海が好きなことを話していた。
いつも彼に会社の愚痴を聞かされていたので、
私は月の話しが楽しかった。

「今カフェ人気だけど、
どこも人手不足でカフェで働くの大変じゃない?」

と聞くと、

「うん、人がいないから大変だよ、
でも好きでやってる仕事だし、
めっちゃ楽しいから大変じゃないよ。」

月はきらきらしていた。

彼と大違い、
些細なことに腹を立てる彼とまったく違う。

私は月と話しているだけで、
元気になれる気がした。

ランチのパスタも食後のコーヒーも全部おいしくて、
食後のデザートにパンケーキを頼んで2人で食べた。
もう何年も前から付き合っているような感覚になった。

「全部おいしかった!良く来るカフェなの?」

「星の好みのカフェを色々探したんだ、
ここが一番星の好みだなと思って、
喜んでもらえて良かった。」

「ありがとう!
落ち着いた雰囲気で私こういうカフェ大好き。」

こんなマメな若者がいるのね。
月とお付き合い出来る女性は幸せ者だな…。

「カフェの裏に公園があるんだ、
このあと少し散歩しない。」

「最近公園なんて行ってないから、
行きたい。」

私たちは会計を済ませることにした。

「俺、男だもん今日はおごらせて。」

と言って月が財布を出した、
「えっいいよ、私も出すよ。」

私はお財布から千円札を出した、
すると千円と一緒に紙が落ちた、
小さな紙で月の絵が描いてある、
それは月が働いてるかカフェの、
サービス券だった。

月はそれを拾って、

「これうちのお店のサービス券、なんで持ってるの?」

と不思議そうに私を見ている。

つづく


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