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【連載】日本文化のはなし

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日本文化の色々を語る連載。とりあえず隔週月曜更新にします。現状、毎週月曜日は割とこういう系の話をしています。月曜日に知的になる人。
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#器

【器のはなし】いつか直したい器たち。捨てたくないし使いたいんだよなあ。

二週間くらい前、おかずを盛り付けた器をレンジで温めて、机に運び置いた瞬間、ヒビがガッツリ入る音がした。このタイミングで、まさかこのまま割れるなんて言わないよなあ?と指を離すと、まだ分裂はしていなかった。しかし油断は出来ない。入ったヒビが深く、貫通している場合、おかずの汁が滲み出てしまう。……それはまあ食べ終わってから机拭けばいいか。 という顛末があった器がこれだ。 なぜまだ取っておいてあるのかというと「いつか直そう」と思っているからだ。正直捨てるか迷った。かなり。この器は

【器のはなし】かわいいもので心を救う。かわいいは疲れに効く。

何もしてないのに暑さで疲れる夏よ。いまさら熱中症対策でタブレットと粉アクエリを買ってきた。軽い熱中症に一度なった後遺症が続いている。春雨スープに浮いているお花の具材の可愛さに救われるんだから、可愛いものを見せて他人の心を救うのは、今、まさに今、求められていることのはずだ。 今回は、私が実際に何度も元気づけられた器を紹介する。 ざっくりしたゆるゆるの絵付けに良い予感を感じる。まあね、とりあえず一周分の写真をご覧ください。 これ!この背中のこれ!!雀!!!何度見ても良い〜〜

【器のはなし】納涼のための青磁。みずみずしいエメラルドグリーンだ。

本来は昨日が更新日だったが、あまりにも疲労が溜まりすぎていてやる気にならなかったんで、今日に移動。前回に引き続き、今回も涼しげな器をババっとやっていくぜ。青磁じゃ。 青磁はエメラルドグリーンや白濁した黄緑や水色っぽい色をした釉薬がかかった磁器で、目をひく美しさがありつつも使いづらそ〜なカラーリングなので買うかどうか悩む。釉薬を何度も塗り重ねて色を付けるので、厚みがあって重たいものが多い。 まずは白菜を。これは気に入ってるから何度か出しているような、二回目かもしれないな。

【器のはなし】納涼のためのなずな文。見た目がなんとなく涼しそう。

暑いから涼しげなの見よう!と思って、今回はなずな文です。ベロ藍とか瑠璃釉とかの深い青も迷ったけど、なんか目に入ったから、なずな。 なずな文様と呼んでいる、この模様は霊芝文様とも呼ばれている。植物の花弁みたいなのの中に描いてあるのがそれ。「なずな」はぺんぺん草で、「霊芝」はでかいキノコ。サルノコシカケみたいな見た目だよ、と教えられたことがあるが、そもそもサルノコシカケというキノコを知らなくて全然分からなかった過去がある。 器全体がお花みたいになっているが、これがなずな文の定

【器のはなし】白って二百色あんねん

好き好きの器を大自慢する回。今回は、江戸中期染付輪花縁なます皿。一目惚れと言っても差し支えないほど瞬時に購入を決めた。一客しか無かったし、傷モノだから安かったし。 まず注目すべきなのは白磁の部分が多いところ。江戸期の白磁は高い傾向がある。真っ白は高価がち。おそらく良いものしか残されていない。現在ではダメなのは出回ってない。白磁を美しく作るのは難しいからそもそもの基準が高かったのだろう。ここからは私の想像なんですが(栗原さんの口調です)、あまり良くないのは絵付けして誤魔化して

【器のはなし】手持ちの中で多分一番出来の良い器を見せながらずっと話す

手持ちの中で、多分、一番出来の良い器。江戸中期染付蛸唐草文なます皿。金継ぎされているから骨董品としての価値がすごくあるわけではないし、これよりもっとすごいものが美術館や博物館に行けば見れるわけだけど、それでもやはりこれは美しい。 江戸中期の伊万里だから古伊万里にカテゴライズされる。「古伊万里」というのはざっくり言えば江戸時代の伊万里焼のことで、人によっては江戸時代の作で出来が良いもの(上手のもの)をだけ古伊万里と言ったりする。伊万里焼は誕生して割とすぐに全盛を迎える。それが

【器のはなし】ガラス器コレクションを見て行ってくれないか

GWといえば陶器市だが、今年はそのことを忘れるほど木工に励んでおり、各HPもオンラインショップも見ていない。見たら欲しくなるし、そういう年もあって良いだろう。益子陶器市に出店されている望月万里さんが、雲型の片口を作っていて、それの白色バージョンを先日Twitterに掲載されていたのが気になっている。この片口、藍色だけ存在していたのだけど個人的に白が欲しくて待ってたもんで。たのむ〜手に入れるまで作っててくれ〜。 器作家さんも「推しは推せる時に推せ」が適用されていて、いつ作品作

【器のはなし】六歌仙全員の名前覚えたはずなのに、いつの間にか言えなくなっている。

今回はどう〜しよっかな〜と器を眺めていた。モチーフごとに器を出していくのも良いな、花とかかな。というか前に何をやったかな。覚えてないけど多分まだやってないだろう。で、決まったのが人物図縛りである。 というわけで、今回はいろんな人たちを見ていこう。なんか集めてみたら個数多かったからサクサクと進める。 六歌仙六歌仙、人生のどこかの段階で全員の名前覚えたはずなのに、いつの間にか言えなくなっている。小野小町と在原業平はみんな言える。お坊さんが二人、喜撰法師、僧正遍昭。あとは文屋康

【器のはなし】使用頻度を稼ぐために別の用途で使用している。

食器ではなく手芸道具として使っている器三客の話をする。家に器がありすぎて、食器として使うのでは出番が少なすぎるので使用頻度を稼ぐために別の用途で使用している。その代表をご覧ください。 キッコーマンノベルティ湯呑重ねた布を留めるクリップや小さい紙を入れている。小さい紙は、ミシンの縫い始めと終わりに返し縫いをするとグシャッとなる生地を縫製するときに生地の下に敷いている。大きさがちょうど良くミシンの隙間に置けて便利。口が広がっているのでクリップを取り出す時に引っかからずスムーズ。

【器のはなし】手持ちの中から食器以外の陶磁器をくりだす

気分的に「人気のなさそうな器シリーズをやるのは今日じゃねえ」と思ったので、別のをやる。いつも食器ばかり見せびらかしているが、当然のように食器以外の器もある。花器くらいしか食器以外が思いつかないが、多分他にもあるだろう。酒器と茶器は食器なのか?まあ良い、本記事での「食器」は「食べ物を乗せる器」くらいに定義しておこう。 ネットの海から画像を拾うのは無断転載になるので、私は礼儀正しく私物を写真撮って載せる。じゃないとニコニコ動画のテニミュみたいに消されてしまう。 ○ さて、ま

【器のはなし】帰省中なので実家の器を紹介する

二週間前の時点では夏の季語をやろうと思ってたんだけど、普通に時間がなかったので実家の器を紹介する。実家の器と言っても、私がこれ買ってよと言って承諾して買ってもらったやつ。紹介するのは古い器だけだけど、食器棚は昭和とか平成の器のが多いです。私の趣味と母の趣味が偶然重なった、そういうラインナップです。 江戸中期青磁染付流水に菊図6寸皿中期の青磁はなんか良い。重みがあるというか、なんでしょうね。このタイプは、内側の絵付けがあまり可愛くないことが多くて、どちらかというと渋い柄のを見

【器のはなし】桃の割れ目は上にくるべきか下にくるべきか

今回は少し変則的な回。話題に必要な実物を持っていないので、イラストで代用しているが、ちゃんと見たい人は「伊万里焼」とか入れて画像検索してほしい。 ○ 色絵磁器の見込みには、桃の模様が描かれていることが多い。今日はこの桃の話をしにきた。 この桃の何を話すかというと、「正しい向き」のことである。桃の模様に込められた意味の話などは特にしない。調べれば出てくる。 Twitterでは「桃の絵を描くときに割れ目がある方を下にするのは日本人だけ」というトピックがしばしば話題に上がる

【器のはなし】照明にした蓋付茶碗をちょっとだけ語る

前回の宣言通り、蓋付茶碗の話をする。例の「蓋付茶碗を照明にしたらかわいすぎる事が証明された」記事で使用したものです。 茶碗の話に入る前に、器の名前についてちょっとだけ。「染付松竹梅図小皿」とか「織部五弁小鉢」とか、そういうアレ。 基本的に「絵付などの技法もしくは釉薬の名前」「描かれている図柄や構図」「器の形」の順番に並べて名前をつけている。例えば、前回のものは「染付市川海老蔵図5寸皿」と名前をつけることが出来る。染付=絵付の技法、手描きのこと。市川海老蔵図=前回解説した通