【器のはなし】納涼のためのなずな文。見た目がなんとなく涼しそう。
暑いから涼しげなの見よう!と思って、今回はなずな文です。ベロ藍とか瑠璃釉とかの深い青も迷ったけど、なんか目に入ったから、なずな。
なずな文様と呼んでいる、この模様は霊芝文様とも呼ばれている。植物の花弁みたいなのの中に描いてあるのがそれ。「なずな」はぺんぺん草で、「霊芝」はでかいキノコ。サルノコシカケみたいな見た目だよ、と教えられたことがあるが、そもそもサルノコシカケというキノコを知らなくて全然分からなかった過去がある。
器全体がお花みたいになっているが、これがなずな文の定番の描き方で、江戸時代の伊万里でもこの模様のものを見たことがある。ちなみに写真に写っているこれらは全て明治前期の器。
染付の小皿。よく見る。よく見るが人気なので店頭に並んでから消えるのが早い。なぜ人気なのか私にはよく分からず、ずっと購入を見送っていた。多分……可愛い……んだね?個人的には微妙な余白が気になって、全体に絵付されているのに白っぽい印象なのが刺さらなかったんだよなあ。
じゃあなぜ手元にあるのかというと、これは他のものよりちょっと素朴な感じが良かった。おそらく焼きの温度がやや低めで、透明の釉薬のツヤ感が十分でない。のか?いや、素地の白さと染付の色味が暗い青なところをみると、これはケムリだな。焼くときに煙がかかってしまって、煤っぽくなることをケムリと言う。窯傷の一種。ケムリとも言えないくらいの綺麗さではあるが、他のツヤツヤとした器と比較すると若干くすんでいる。それが好みにハマった。
サラリと描かれた模様なだけに個体差がデカイ。霊芝文と言う人もいるが、これくらい描き込みがしっかり見えているとキノコではないよなあ?と思う。なので私はなずな文派。
続いては小碗。小向付か。
これは結構花っぽい部分が潰れているから、キノコと説明されても納得するかもしれない。元ネタが中国磁器とかにあるのかなあ。骨董屋でよく見る柄だから、昔から流行ってたんだろうし、流行の元を辿ればなずなか霊芝かハッキリするんだろう。
描き方違いすぎだろ。絵付師は確実に違う。もしかすると産地や窯が別の可能性ある。なんか高台の太さ違くない?根元の絵付けも違うわ。
小皿と合わせて中国茶とか良さそ〜って思って、見つけた時にささっと買ったものだから、正直気に入ったのを選べてない。強いて言うならこれかなあ〜で集めてしまった。サイズ感はなんか良くて、手作りアイス一回分にピッタリ。
紙刷印判のなずな。これは本当に可愛い。一番気に入ってる。染付にあった妙な余白感が解消されてて最高。見つけた時は、なずなって紙刷が正解だったんだ……と思った。紙刷は無理に細かい柄を作ろうとして、線がごちゃついて分かりづらくなりがちだけど、なずなは細かすぎず大雑把すぎず、太めのべったりした線との相性が良い。
大量生産を目的とした印判は、裏側に何も模様がないことが多い。あるものもある。紙刷のなずな、こんなに可愛いのにあんまり見ないんだよねえ。染付で描く方が早そうだもんな。型紙作る時間あったら描いちゃった方が早そう。
紙刷は耐水性のある型紙を使っていて、紙の強度を上げるために細かく繋ぎ目が入っている。なずなを取り囲む花弁のような線が点線で、職人たちの努力よ、とつい過去に思いを馳せてしまう。多分、紙刷が好きな人はこういうところがすきなんだろう。私は染付派だが、分からんでもない。
という感じで納涼終わり。なんかさ、この暗めの木の机って器載せると可愛いよね。手作りポーチは映えないんだけど器は似合う。
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めでたし、めでたし。と書いておけば何でもめでたく完結します。