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あじさい 2

『不吉?』『紫陽花が?』
彼岸花などの類いではないし、道端や人の庭でも
よく見るけど…
それに今の時期、様々な色の紫陽花の鉢植え達が
花屋の店頭の一軍席を占領し素通り客をも楽しませている

素通り出来ず、ディスプレイ効果にまんまと乗せられ
衝動的に購入したのが、うちの母親だ。

それをいきなり『不吉だから飾るのをやめろ』とは
穏やかではない。

父は続けて
『紫陽花は花の色が変わるから、裏切りって言う意味で
昔から縁起が悪い、だから玄関先なんかに飾るもんじゃない』と、言ってきた。
私は、父がそんなに花言葉に詳しかったのか?と唖然としていたが(大丈夫か?親父…)
母親は、
『いつもそんな事ばっかり言って…
もう分かった!分かった!!外に出すから、
本当にもう〜』
と、ブツブツ言いながら紫陽花の鉢植えを外に出した。 

父は海関連の仕事を自分で始め、
商売の全うは『信頼関係が一番!』と思っている
昭和人情派のおやじ経営者だった。
父の周りにも似た考えの人が多い時代だったのかも。
だから裏切りやコロコロ変わる事は信用出来ない、
と言う事だそうだ。
(紫陽花は花だから、別に裏切らないと思うけど…)

それ以来、母が紫陽花を買う事はなくなり、
私もなんとなく紫陽花を買う事は避けていた。

その母が亡くなってから今年の8月で、丸18年になる。
母が亡くなった10年後、父も亡くなり
今年の3月で丸7年を迎えた。

当たり前だが自分の父母が亡くなっても
毎年、母の日、父の日はやってくる。
その度に辛く、悲しく、淋しい時期は過ぎたけど
毎年目に入る『母の日のプレゼント特集!』の
 【紫陽花の鉢植え】
自分も商売をしていた為、なんとなく敬遠していたが、
今年初めて買って玄関に飾ってみた。
小ぶりの鉢で、豪華でも高額でもない普通の紫陽花だ。

飾った結果、
特別感傷的になる事も感動する事もなかった。

ただ、あの日嫌な事を言ってる事は分かっているけど
言わずに居られなかった父の気持ちと、
玄関に花を飾りましょう♪と軽い気持ちで買った
紫陽花をいきなり拒否され、ブツブツ言いながら
撤去した母の気持ちが

なんとなく浄化され昇華したような気がした。

その場に居合わせ、モヤりながらどっちつかずだった
自分の気持ちが一番スッキリしたのかも…です。




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