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日本人と宗教

今回は宗教観について。
というと堅苦しいようだけれどシンプルな話。
そしてずーっと思っていること。

以前『両親のこと』で書いたように私の父方の祖父はキリスト教(プロテスタント)の牧師、母方の実家は仏教(浄土真宗)だけれど、両親は無宗教である。
娘の私も当然無宗教だった。でも日本人ならだいたい皆そうであるように、幼い頃から宗教はいつも近くにあった。

私は祖父の家でもあるキリスト教会の、讃美歌の響きや光と影のある雰囲気がとても好きだった。
母方の実家に里帰りすれば、いつもキラキラと眩しくてお供え物がたくさん並ぶ大きな仏壇に手を合わせた。
保育園も実はお寺の住職さんが創立した園だったので、お寺で正座して南無妙法蓮華経を唱えたし、花祭り(お釈迦様誕生のお祝い)で甘茶を飲むのも楽しみだった。

私に限らずクリスマスにケーキを食べ、お正月には初詣に行き、節分に豆撒きをし、家を建てる時には地鎮祭をするのはほぼ一般的な事だろう。
キリスト教徒とは聞いたことがないけれど、友人たちの結婚式は教会式がやはり多い。

そういえば結婚式に出席するとよく「皆さんご一緒に」といきなり歌わされる定番の讃美歌312番「いつくしみふかき」だが、私は教会で耳に残っていたのかメロディがすんなり出てくるが“皆さん”は歌えてるのだろうか。いつも気になってしまう。
もう一つ余談だけれど、牧師だった祖父が亡くなった時、当然教会で葬儀が行われた。
式の後、祖父を寝かせた布団を数人の男性で数ヶ所を引っ張るようにして住居スペースへ運んでいたのだけれど、床に降ろそうというところで
「あれ?北はどっちだった?」
と布団を掴んだまま回りだし布団ごと祖父がくるくる回っているのを見て、それまで泣いていた私も母も周りの人も笑いを堪えられなかった。キリスト教に北枕が関係あるのかは今でもよく判らないけれど、たぶん無い。

個人差はあるだろうが、そういったごちゃ混ぜな宗教行事は子供の頃からあまりに当たり前なので、宗教が絡んでいる感覚がない人も多いかもしれない。

ちなみに私が嫁いだ旦那の家は神道だ。
神道はそれこそ日本人の生活に一番染み込んでいるものだけれど、いざ「さぁ、ウチは神道ですよ」と言われると知らないことばっかりで、へえぇ!の連続だ。

実はこういう宗教に対する寛容な意識、宗教観が、私は自分が日本人で良かったと思う最たる部分だったりする。
2015年にTEDxKyotoの"Reasons for religion -- a quest for inner peace | Daiko Matsuyama"を観て「まさにこれ!」と思ってFacebookとTwitterで紹介記事をシェアしたことがある。シェアした記事はもう無くなってしまっていて残念だけれど、YouTubeに動画はあるのでぜひ観てほしい。
コレを観て本当にめちゃめちゃ共感した…。


疫病や死、人生そのものへの不安から秩序を保つ為に宗教はあるんじゃないかと思うけれど、残念ながら宗教観から差別や戦争が起こることは珍しくない。
宗教の感覚が薄いのに実は宗教が生活に深く根付き、それでいて他国の宗教に寛容な日本人の宗教観は世界では特殊だろう。
もちろんバレンタインやクリスマスのように商業的に利用している側面は大いにあるけれど、それが出来てしまう日本人の宗教に対する無頓着さと節操の無さは、実は最大の長所だと思っている。

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