あなたは、なにをしていますか?
■□■ 小学生向けの物語 ■□■
(何かの壁にぶちあたった時、子供達の心の支えになればと思い、物語ごとにテーマを決めて書いています😊)
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リンネル村では、初めて学校を建てることになりました。
今までは、丘の上で授業をしていたのですが、雨の日や風の強い日、とても暑い日、雪のふる日には、なかなか授業ができません。
子供達は、カール先生の授業が大好きです。
字が書けない子は、字が書けて本が読めるようになり、数字を覚えた子は計算もできるようになりました。
それだけではありません。毎日丘の上で教えてもらうことは、驚きと発見の連続です。
なぜお日様が東から昇って西に沈むのか、雨はどうやって降るのか。
様々な不思議をカール先生と一緒に考えていくのです。
ですから、子供達にとって天気や季節によって授業がないのは、とても残念です。
「毎日、お天気だったらいいのに」
「雨だって大切だよ。雨が降るから僕たちはお水が飲めるんだ」
子供達からそんな声を聞くたびに、カール先生も何と言ったらいいか困ります。
カール先生は、子供達が毎日勉強できるようにするには、どうすればいいかと考えました。
「そうだ!学校を建てよう!!」
学校を建てようというカール先生のアイデアに、子供達も大喜び。
でも、学校を建てるには、たくさんのお金が必要です。
そんな時、リンネル村の人々がお金を少しずつ寄付してくれることになりました。
毎日の生活から少しずつ節約して、学校のためにお金を寄付してくれるのです。
大人も子供も協力しあって、何ヶ月もお金を貯めました。
お金を貯め始めて2年後、ようやく学校を建てられるお金が集まりました。
さあ、いよいよ学校を建て始めます。
たくさんの、本当にたくさんのレンガを丘の上にみんなで運びます。
そしてお金を節約するために、村の人も、子供達も一緒になってレンガを積み上げて学校をつくり始めました。
カール先生は、全体の取りまとめをするために、見回りをします。
目の前では、1年生や2年生の小さな子が、頑張ってレンガを運んで積み上げています。
カール先生は、この学校づくりが子供達にとって、とても勉強になる場だと思っていました。
そこで、子供達にはある質問をしようと前々から考えていたのです。
それは、この学校づくりを子供達がどのように受け止めているかを聞く、大切な質問です。
1年生と2年生の小さな子に、カール先生が質問します。
「あなたは、なにをしていますか?」
小さな子達はキョトンとして答えます。
「レンガを積んでいます」
カール先生は暖かい眼差しで言います。
「大変なのにレンガを積んでくれてありがとう」
辺りを見回すと、3年生の子供達が楽しそうにレンガを積んでいるのが見えました。
今度は3年生の子供達に質問します。
「あなたは、なにをしていますか?」
「リンネル村で初めての学校をつくっています!」
3年生の子供達は嬉しそうに答えます。
「学校づくりに協力してくれて、先生もありがたいよ」
カール先生は丁寧にお礼を言います。
続いては4年生の子供達が、一生懸命にレンガを積み上げています。
カール先生は、またあの質問をします。
「あなたは、なにをしていますか?」
4年生の子供達は、さも愛しそうに積み上げたレンガを見て言います。
「何年もかけて貯めたお金で学校をつくっています。この学校はリンネル村みんなの気持ちが詰まった学校です」
その言葉を聞いて、少し涙ぐみながらカール先生は言いました。
「本当にそうだね。ようやく皆の学校が建つんだね。本当にありがとう」
しばらく歩くと5年生の子供達が、協力しあいながらリレー形式でレンガを運んでいるのが見えました。
さすが5年生はレンガ運びも工夫しています。
感心しながらカール先生は例の質問をします。
「あなたは、なにをしていますか?」
「歴史に残る学校をつくっています。この学校は10年や20年どころか、何百年も残って、未来の人達にも愛される歴史的な学校になります!」
誇らしげに言う子供達が、輝いて見えます。
「確かにそうだね。何百年後も愛されて後世に残る学校になるよ。きっと」
カール先生も嬉しそうに言います。
最後は6年生の子供達。6年生にもなると段取りよくレンガを積み上げています。
それぞれレンガを運ぶ係、コンクリートを塗る係、積み上げる係と役割を決めて手際よく作業をしています。
さあ、ここで最後の質問です。
「あなたは、なにをしていますか?」
「多くを学んで、沢山の人たちを幸せにする大人になるための学校をつくっています」
そう言った6年生の子供達の目は真剣でした。
学校で学び、世の中に役立ちたいと言う、大きな大きな志を子供達は持っているのです。
それを感じ取ったカール先生は、感動しました。
子供達は、こんなにも学び、成長している。
カール先生は子供達を頼もしく思って、言います。
「君たちは自分たちの手でつくり上げる学校で、多くを学んでいくんだよ。
そして、その学びを多くの人々のために役立てて下さい。
先生はその為にだったら、何だってしますよ」
リンネル村では、その年の冬までに学校が完成しました。
多くの子供達の学ぶ声が、丘の上から聞こえます。
村の人々は、その声を聞きながら、子供達の成長を日々感じています。
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