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【いまさら聞けない?!】ブルー・オーシャン戦略とは

ビジネスシーンでよく耳にするブルー・オーシャン戦略について、W.チャン・キムとレネ・モボルニュの共著『ブルー・オーシャン戦略 新版 競争のない世界を創造する』を読んだ。

個人的にポイントだと思った点をまとめておきたい。

RED or BLUE

レッド・オーシャン戦略とは、既知の市場空間で競争し、競合他社を打ち負かすための戦略をいう。

既存の需要を引き寄せることに主眼が置かれるが、競争のルールが広く知られているため競争は激化する。

低コスト・差別化・フォーカスがキーワードである。

価値とコストの間にはトレードオフの関係が生まれる。

差別化か、低コストか―どらかの戦略を選んで、 企業活動すべてをそれに合わせることになる。

ブルー・オーシャン戦略とは、競合他社に打ち勝つただ一つの方法として、相手を負かそうという試みをやめることを戦略とする。

それは、競争のない市場空間を切り開くための戦略である。

新しい需要を掘り起こすことに主眼が置かれるが、そこに既存のルールはない。

そのため競争は無意味なものになる。事実上の独占状態が生み出されるのだ(ピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』も参照されたい)。

差別化と低コストをともに追求し、その目的のためにすべての企業活動を推進することが特徴である。

その結果、価値を高めながらコストを押し下げることが可能になる。

そのため、ブルー・オーシャンを生み出せれば利益や売上高は伸びる。

理想的なブルー・オーシャン戦略は、ゼロからイチを生み出す”0→1”戦略に思われるかもしれない。

しかし、大多数はレッド・オーシャンの延長として、 つまり既存の産業を拡張することによって生み出されるのだ。

戦略の土台はバリュー・イノベーション

ブルー・オーシャン戦略のキーワードは、バリュー・イノベーションである。

バリュー・イノベーションとは、コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める状態を意味する。

コストを下げるには、業界で常識とされている競争のための要素をそぎ落とすことが重要だ。

買い手にとっての価値を高めるために、業界にとって未知の要素を取り入れることが必要となる。

すると時が経つにつれて、優れた価値に引き寄せられるようにして売上げが伸びていき、 規模の経済性が働くため、いっそうのコスト低減が実現するという好循環が生まれる。

ブルー・オーシャン戦略のツール

〈戦略キャンバス〉
ブルー・オーシャンを創り出すためには、買い手に提供する価値を見直して、新しい価値曲線を描くことが必須になる。

そのためには、「戦略キャンバス」を描くことが求められる。

これによって、既存の市場空間の現状を把握し、競合他社の戦略及び顧客のメリットが明らかになる。

具体的には、競合他社が現在どのような製品を提供しているかを要因ごとにスコア化して線で結べば、競合他社の戦略の特徴を示す価値曲線が描ける。

価値曲線は、戦略キャンバスの柱をなすものであり、競争の要因ごとに各社のパフォーマンスを表していける。

そのうえで、競合他社から代替産業へ、顧客から顧客以外へと視点を移すことが重要になる。

〈4つのアクション〉
価値曲線を刷新するためには、次の4つのアクションが役に立つ。

❶取り除く
業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、 取り除くべき要素は何か?

❷減らす
業界標準と比べて思いきり減らすべき要素は何か?

❸増やす
業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か?

❹創造する
業界でこれまで提供されていない、今後創造すべき要素は何か?

4つのアクションで特に重要なのは、取り除くと創造するである。そこからバリュー・イノベーションは生み出される。

これを考えることによって、既存の競争要因の枠組みにとらわれたまま価値を最大化しようとする発想から抜け出すことができる。

つまり、競争要因そのものを刷新して、従来の競争ルールを無効にするのである。

優れた戦略に共通する3つの特徴

❶メリハリ
✅何を重視するか
✅何を重視しないか

❷高い独自性
✅4つのアクションを実践して、業界標準とは
 違った戦略プロフィールを築く

❸訴求力のあるキャッチフレーズ
✅明快なメッセージ
✅サービスの中身を正しく表現したもの

ブルー・オーシャン戦略【策定の4原則】

【原則1】市場の境界を引き直す
市場の境界を引き直すためには、次の6つのパスを活用する。

❶代替産業に学ぶ
代替財や代替サービスを提供する業界に着目する。
例えば、映画館とレストランは、「外出して楽しい夕べを過ごす」で代替関係にある。

❷業界内の他の戦略グループから学ぶ
業界内のさまざまな戦略グループを見渡してみる。

❸別の買い手グループに目を向ける
業界の買い手グループを定義し直す。
購買者(purchaser)、利用者(user)、影響者(influencer)のどれにフォーカスするか?

❹補完材や補完サービスを見渡す
買い手はどのようなトータル・ソリューションを求めているか?
利用前→利用時→利用後のシチュエーションを想像する。

❺機能志向と感性志向を切り替える
機能志向から感性志向へ → どういった要素を付加するか?
感性志向から機能志向へ → 何をそぎ落とすか?

❻将来を見通す
将来に渡って外部のトレンドの形成に関わる。

〈トレンドを見通す三原則〉
 ①事業に決定的な意味合いをもたらす
 ②後戻りしない
 ③はっきりとした軌跡を描く

【原則2】細かい数字は忘れ、森を見る
森を見るということは、戦略をビジュアル化するということである。

そのために4つのステップが用意されている。

ステップ1 目を覚ます
●現在の戦略をチャート化して、競合他社のそれと比べる
●戦略を変えるべきかどうかを見極める

ステップ2 自分の目で現実を知る
●自ら最前線に足を運んで、ブルー・オーシャンを創造するための 6つのパスを探る
●代替財や代替サービスの優れた点を見極める
●さまざまな競争要因について、廃止、追加、変更などの必要性を判断する

ステップ3 ビジュアル・ストラテジーの見本市を開く
●ステップ2での洞察に基づいて、新しい戦略キャンバスを描く
●既存顧客、他者の顧客、さらには潜在顧客から、 新しい戦略へのフィードバックを得る
●フィードバックを活かして、戦略案をさらに練り上げる

ステップ4 新戦略をビジュアル化する
●新旧の戦略を1枚のチャートで表し、一目で比較できるようにする
●新しい戦略の実現に役立つプロジェクトや施策のみを推進する

【原則3】新たな需要を掘り起こす
新たな需要を掘り起こすためには、既存顧客に焦点を当てるという慣行と買い手ごとの違いに対応するために、 よりよいセグメンテーションを目指すという慣行という二つの慣行を問い直さなければならない。

顧客以外の層に視線を向ける場合には、顧客間の違いには焦点を当てず、買い手が共通して重んじる要素をテコとして使うことが重要である。

顧客以外の層=非顧客層は3つのグループに分けられる。

【第1グループ:市場の縁にいるが、すぐに逃げ出すかもしれない層】
他業界へ去った人々の共通点(潜在需要)を探る。

【第2グループ:あえてこの市場の製品やサービスを利用しないと決めた層】
あなたの業界の製品やサービスをあえて使わずにいる理由の共通点を探る。

【第3グループ:市場から距離のある未開拓の層】
各セグメントの違いを問い直し、 互いに関心のないセグメントの共通点を探る。

3グループすべてを見渡し、組織の力量や得意分野に適した範囲で、 最大のグループに狙いをつけるのが定石となる。

【原則4】正しい順序で戦略を考える
❶買い手にとっての効用
この事業アイデアは、比類のない効用をもたらすだろうか?

❷価格
多くの人々にとって手が届きやすい価格か?

❸コスト
価格競争力を保った上で利益の出る水準までコストを下げられるか?
なお、「コストプラス方式」ではなく、「価格マイナス方式」でコストを導き出すことを徹底する。

❹実現への手立て
このアイデアを実現する上での障害は何か?
事前に対策をとっているか?

❶から順番に自問し、答えがNOなら練り直し、YESなら次のステップに進む。

すべてのインデックスにYESと答えられるならば、それは商用に耐えうるブルー・オーシャン・アイデアである。

ブルー・オーシャン戦略【実行の4原則】

【原則1】組織面のハードルを乗り越える
ブルー・オーシャン戦略の実行にあたっては、組織面の4つのハードルが想定される。

❶意識のハードル:現状に浸り切った組織
✅数字の力を借りて従業員を説得しない
✅外部委託による市場調査だけに頼らない
✅部下・上司・自分自身に業務の最も悲惨な一面を直視させる(現場に足を運ぶ)
✅マネジャーたちに、憤懣やるかたない顧客の声に直に耳を傾けるよう促す

❷経営資源のハードル:限られた経営資源
✅従来の前提に囚われない
✅重点領域を探し出し、そこにヒト・モノ・カネを集中させる
✅非重点領域を探し出し、交換できる資源を見つけ出す
✅経営資源の交換に長けた人物を探し出す

❸士気のハードル:やる気を失った従業員
✅全員ではなく、中心人物に働きかける
✅公正なプロセスを用いて、中心人物をガラス張りの状態でマネジメントする
✅高い業績や壮大な戦略ビジョンを示すだけではダメ
✅あらゆる階層の人々が行動を起こせるように、目標を具体的なレベルに落とし込む

❹政治的なハードル:強大な利害関係者からの抵抗
✅尊敬できるアドバイザーの力を借りて、自ら奔走しない
✅反対勢力や味方の検討をつけ、味方とスクラムを組む

【原則2】実行を見据えて戦略を立てる
実行を見据えて戦略を立てるためには、公正なプロセスが必要である。

公正なプロセスとは、取り決め・説明・明快な期待内容といった手続き的正義を意味する。最初から従業員を巻き込むというイメージだ。

公正なプロセスの中で、従業員は自分の知性や感性が評価されていると感じたら、義務を超えて自発的な協力を行う。

その結果、期待を超える水準で戦略が実行されることになる。

公正なプロセスを無視すれば、従業員に不信や憤りが芽生え、知識を囲い込み、戦略の実行に協力しなくなる。

【原則3】価値提案、利益提案、人材提案を整合させる
価値提案とは、買い手にとって価格以上の効用である。「お、値段以上」というアレ。

利益提案とは、企業にとっての利益(売上−コスト)である。

人材提案とは、戦略の支援と実行を促す目的で人材に提示する、前向きな動機づけ要因とインセンティブである。

レッド・オーシャン戦略では、差別化と低コストのどちらか一方を目指して、3つの戦略提案を整合させる。

それに対してブルー・オーシャン戦略のもとでは、差別化と低コストの両方を目指して、3つの戦略提案を整合させることになる。

差別化と低コストを軸にして、価格、利益、人材の3つの提案を整合させると、単に大きな相乗効果が生まれるばかりか、好循環によってさらにそれが強まっていき、すべての人や組織に恩恵が及ぶ。

チェックすべきは次の点である。

✅差別化と低コストを実現するために、3つの戦略の整合性がとれているか?
✅拠り所となる利害関係者を、部外者を含めてすべて特定できているか?
✅個々の利害関係者が高いモチベーションのもとで戦略を後押ししてもらえるよう、お膳立てができているか?

【原則4】ブルー・オーシャン戦略を刷新する
ブルー・オーシャン戦略には、その模倣を阻む壁があり、そう簡単には模倣はできない。

とはいえ、いずれはほぼ例外なく模倣される。そのときには、ブルー・オーシャン戦略の刷新が必要となる。

❶戦略キャンバス上の価値曲線に目を光らせておく
価値曲線が競合他社と似通ってきたら、次なる戦略の創造に着手するタイミングだ。

❷幅広い視点から事業ポートフォリオを計画策定し、刷新する
事業ポートフォリオをパイオニア、移行者、安住者に分類してプロットし、ポートフォリオの重点や刷新の時期を把握する。成長の可能性を最大限に高めるには、将来の成長を目指すパイオニアと、その時々でキャッシュフローをもたらす移行者と安住者、両者のバランスがとれたポートフォリオが必要となる。

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