015 | 東京サイクルデザイン専門学校の卒業制作展を見に行った



昨年6月、青山のシーアイプラザで「バイシクルタウン青山」なる展示があったから見に行った。なんでも青山は2009年に "自転車にやさしい街" なる宣言をしたそうで、その流れを受けての企画展示。メインは、実用車からスポーツ車まで、また歴史的名車から現代のプロトタイプまで、様々な自転車の展示だった。

その中にひときわ尖ったデザインのプロトタイプがあった。画像中央奥、近年開校した自転車専門学校(乗る方じゃなくて造る方)の、第一期卒業生の卒業制作だった。自転車1台組み上げるって分かりやすい卒制だな、素晴らしい。シートチューブ(サドルを支える縦方向のパイプ)が無く、そのサドル位置も殆ど変えられない、挑戦的なデザインが素敵だ。まだ学校の歴史は浅いけど、頑張っているなぁとか思いながら眺めた。
(今これ書いてて、改めて確認して分かったのだけど、画像手前の恐ろしく攻撃的な超低重心マシンも同校の卒制だった・悲鳴)



また今年1月、北の丸の科学技術館で「ハンドメイドバイシクル展」なる展示を見物した。展示名通り、大手メーカーが作りそうにない、手作りのカスタムバイクをずらりと、職人が営むショップや小規模なメーカーごとにブースを構え出展していた。

その中にやっぱりあった、あの自転車専門学校の出品が。正式校名は東京サイクルデザイン専門学校。やはり卒業制作の、熟練ビルダー達の製品と比べても引けを取らない逸品が、展示されていた。ブースで番をしていた同校の学生に少しお話聞く中で、2月に卒業制作展がやっぱり青山であると知り、是非見たいと思った。






その卒制展がspiralでいよいよ催されたから見に行った。平日の夜寄ったのだけど、一般的なミュージアムは17時とか18時に閉まるところを、spiralの展示スペースは20時まで開けてるから助かる。




前述のような自転車関係の展示を見に行っても、もの凄く変わったカタチの自転車は、そんなに多くは見られない、展示されない。変わっててもそれはせいぜい、最終的には市販を目的とした、プロトタイプが殆どだから。そこをこの卒業制作展は、流石に先鋭的な、コンセプトにこだわり抜いた、怪しげな?デザインの、超個性的なバイクがおよそ30台、それを見放題だ!

自転車を趣味の1つに挙げつつ、専門的な事はイマイチ(どころかイマ10くらい)な私は、パっと見の構造やデザインが変わった自転車を見るのが大好きなのだ、あぁ眼福(悶絶中)。




そんな力作揃いの同卒制展だったけど、残念ながら写真撮影は禁止です。画像はTwitterの同校公式アカウントから、スクリーンショットで少しだけ紹介させて頂く。→ @TCD_cycle

同卒業制作の中から最優秀作品を選びます。選ばれたのは婦人用自転車「S-CART」。リカンベントのようで実はかなり違う。ただ斬新なデザインて訳でも当然なく、女性が自転車に乗る時も、美しく、女性らしいエレガントな姿勢や立ち居振る舞いでいられる事を目指したマシン。スポーツ車のように前かがみ姿勢にならず、さりとてママチャリとは激しく異なる優雅さを醸す。
最優秀に選ばれたのも納得の、画期的なコンセプトとそれをきちんとした技術で具現化した、機構とデザインだ。




他には、王道的なところでは空力特性に優れレースに特化したマシンや、輪行旅行を意識した小径ホイールの軽快車や、超斬新と言うか実用性ギリギリの、横方向2列のタンデム車や、それぞれに個性的になシングルトラックやスキッドバイクなどが、これでもかと展示されていた。すべて学生の魂の力作だ!

中でも画像右側の中段の、横方向2列のタンデム車は、制作者の兄君が結婚するという事で、そのお祝いの品として組み上げた、メモリアル的なバイクだ。実用性よりもモニュメント的な、思い切ったコンセプトが素敵過ぎ。番してた学生に話を伺ったところによると、集中して負荷がかかる後輪シャフトの強度に若干問題があり、やはり恒常的な実用には向かないとの事。ちなみに勿論公道での乗用は認められないだろう。




最近美大関係の卒業制作を幾つか見てきて、たぶん最後にこの自転車学校の卒業制作を見させてもらった。どこの卒業制作も、なんだか嬉しい気持ちになって見終わって、会場を後にする点は共通する。


東京サイクルデザイン専門学校 http://tcds.jp/index
CYCLESPORTS誌 記事     http://www.cyclesports.jp/depot/detail/59109