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イタリア・南チロルを歩く 第5回目 Kurtinig an der Weinstraße/Cortina Sulla Strada del Vino

しばらくご無沙汰していた街歩き、もとい「村歩き」をぼちぼち再開しようかと思う。この「歩き」シリーズはのんびり自分の気の向くままに書けるだろうと思い始めたにもかかわらず、やり始めると旧オーストリアであり現在も自治県として独特の存在をなす南チロルならではというのだろうか、イタリア併合との闘いの記録が訪れたところ全ての場所で記されていたという事実を目の当たりにし、単なる村歩きで済ませていいものだろうかと今も考えているところだ。

とまあ村を歩くことは変わらないので、あまり気負いしないようにする。書かなくてはいけない時は記事中で書いたり、別の記事にして書いていこうと思う。

さてこの長い名前の村名だが、イタリアマニアの方なら「あら?ひょっとして・・・」と思われる人もいるかもしれない。そうこの村は、あのイタリアの小さな村を巡る番組で紹介された村なのだ。村歩きをしている中でも群を抜いて小さな村であるこの村の人口はなんと643人(2016年)面積は2平方キロメートルというサイズは南チロルで2番目に小さい村なのだそう。じゃあ南チロルで一番小さい村はどこなんだ?と非常に気になる私である。


これで一つの自治体

地図をご覧の通り、緑が少し濃くなっている部分が村である。さあてこの範囲に一体何があるのか?ない、何もない。森もない、山もない、そして村の議員グループもない。見事に何もないのだ。しかしこの南チロル南部の「低地」で歴史的な要所として唯一この村だけが湿地帯にもかかわらずエッチュ川/アディジェ川の谷の真ん中に作られたのだ。周辺で発掘された石器時代やローマ時代からの出土品を見ると早い時期から狩猟や漁業を生業として生活していたことが窺える。そんな湿地帯にできた村は川に近いこともあり頻繁に洪水被害を受けたことから「小さなベニス」と呼ばれていたそうだ。

聖マルティン教会

町の中心の広場には聖マルティン教会がある。そして隣接する墓地。墓地というものはだいたい町のはずれにあるものなのだが、中心地にある教会のすぐ横に墓地という立地からもこの村の小ささがわかる。私が行ったお昼前の広場の閑散ぶりといったら!まあオフシーズンの南チロルの村なんてこんなもんだ。


村役場と銀行

中心の広場らしく村役場と銀行のセット。そして郵便局は隣町まで行かないとない。郵便局がないというのは中々の攻めっぷりではないか。役場の営業時間も日によってまちまち。大体3時間ぐらいしか開いていない。行った火曜日はお休みだった。隣の銀行も開いている気配はなかった。


小売店とキオスク

そしてもはや「何でも屋」と化している食料品、生活用品専門の小売店と雑誌や新聞、文房具などを扱うキオスクがあった。村での買い物はここだけであろう。お昼前だったのでここだけ人の出入りがあった。といっても片手で足りぐらいの人数であったが。店舗の前の石畳は車が通ることもできるので写真を撮る時には注意しなくてはいけないのだが、私が写真を撮っていると通りがかりの車が私が写真を撮り終わるまで車を停めて待ってくれるという「あり得ない」情景に出くわした。温かい、優しい村人である。思わずペコリ!と頭を下げてしまうぐらい。なんかすごく好きになってしまったな、この村。

人より動物への遭遇率が高い

広場を少し離れてみたら人にはほとんど会わなかったが、動物とはよく目が合った。どの動物も随分人懐っこい。ここの人の動物への接し方が私のような外国人への接し方と同じように温かいのであろう。なんとも和む。猫が鳴きながら初めてみる私に近づいてくるし、私を見つけてワンワン吠える遠くにいる犬。そして鶏までもが挨拶しにきてくれた。「写真撮らせてね」といったら大人しく待っている鶏までもが「おもてなしのプロ」だった。


この至近距離まで来てくれました

いい村だなぁ、人も動物までもが温かいなんて最高じゃないか!私の住む村だっていい所だが、このこじんまり感が妙に心地よいというのか、時間の流れ方が穏やかなのだ。なるほど、近隣諸国の人たちに南チロルが人気なのかわかる気がした。自然豊かで、のんびり過ごしながら多種多様なワインを飲んで余暇を楽しむ。最高だな。

ここで村はおしまい


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