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薬物のような幸せ


病みつきになるような、
手放せなくなるような、
そんな幸せをくれる人に、
わたしは一度だけ出逢ったことがある。

わたしは大学生の頃に一度、
死ぬほど病んだことがある。
本当に死のうと思ったのは、
あの時期が最初で最後だと思う。


まあ、なぜそうなったか、
時間がある方はこれを読んでもらえたらいいな。

簡単に言うと、
大切な人に死にたいと言われ、
それが自分のせいであったのもあり、
その人の死にたいに引っ張られたって感じです。


ただ、死にたいとは思ったけれど、
今すぐに死のうとは考えていなくて、
大学生だったので大学を出て奨学金を返して、
誰にも迷惑をかけないように死のう
なんて思ってました。
死にたいくせに計画性があるの、
今思えば笑えるね。
多分、死にたい気持ちとは裏腹に、
この状況を変えてくれる何かを期待していたんだと思う。
その 何か がわからなかったわたしは、
その計画を実行するためにどの仕事に就いたら良いか、
そしたら何年で奨学金を返せるか、
そればかり考えていた。

病んでいるとは言っても、
大学にはちゃんと行っていたし、
友達とも笑って話せていた。
だから周りと比べたら、
そんなに重度の病みではなかったんだと思う。
まあ、まず周りと比べてる時点でおかしいってことを
あの時の自分に教えてあげたいね。

辛かったことといえば、
大人数のいる教室に長時間居られず吐きそうになって退出したり、
電車に長時間乗っていられず吐きそうになって降りたり、
リスカしたくなってしてしまったり、
夜1人になると涙が止まらなくなったり、
それくらいだ。


そんな時、彼に出逢った。
そういう時ってさ、1番怖いよね、
弱ってる時に来てくれる人って、
依存しがちよね。
わたしの好みの顔ではなかったんだけど、
世間一般的なイケメンではあった。
初っ端からなぜかわたしのことを好いており、
友達にずっとわたしのことを可愛いと言っていたのを聞いた。
たぶん、意識しだしたのはそこからだと思う。


ある日、彼から連絡が来た、
酔っ払っているから迎えに来て欲しいとのことだった。
彼は全くお酒が飲めない人だ、
そのくせに飲んでるなんて学生っぽいなと思い、
車も持っていないわたしは歩いて迎えに行った。
彼と駅で会い、
ふらふらの彼の腕を掴みながらわたしの家に帰った。
酔いが冷めたら帰るかなと思っていたが、
どうも帰る素振りはなく、
着替えを要求してきたかと思えばサッと着替えて、
わたしのベッドへ潜り込んだ。

あー、このパターンかあ

そう思い、わたしも着替え、
特に断る理由もなかったので一緒にベッドへ潜り込んだ。
彼の服の柔軟剤の匂いと、
お酒の匂いに包まれた布団の中は意外にも心地が良かった。
えっちでもするのかな 
と思ったが手を出してくる素振りはなく、
意外といい子だなと思ったのが第一印象だった。
でも、永遠に顔を近付けてくるから、
その駆け引きはなんとなくだるいなぁと思い
キスをした。
すると本当にすると思っていなかったのか、
大人しくなり、
ただ、抱きしめ合いながら眠りについた。
朝起きて彼の顔を見た時
これがソフレなのかな なんて思った。

それからは1週間ほどで付き合うという展開になった。
自己肯定感の低いわたしのことを、
彼はひたすらに可愛いと褒めてくれた。
ご飯を作れば 美味しいからまた作ってね と笑顔で言い、
何かしてあげるたび小さなことでも笑顔で ありがとう と言った。
家に来るたびに、
彼は自分の好きな甘いお菓子を買ってきて、
笑顔で 一緒に食べよう と言った。

特別可愛くないわたしは、
誰かに可愛いとたくさん言われることに慣れていなかった。
そしてそれがとてつもなく、
自己肯定感を上げてくれるものだというのをこの時、
彼から学んだ。

今思えば、
わたしはきっと彼の手のひらで転がされていたんだと思う。
彼の口説き方が良くて、
真似して他の男を落としたのはまた別の話だけど、
自己肯定感を上げる人を嫌う人はきっといないんだろうなと思って、
これは結構積極的に使わせていただいている。



そんな彼とは会うたびに何度も体を重ねました。
相性が良かったのもあるんだろうけど、
最中に溢れるほどの好きを伝えてくれる彼を、
拒む理由なんてどこにもなかったんだよねぇ。
あの時のわたしは本当に彼に溺れていて、
中出しする彼を止められないくらいには好きだった。
大学生のくせに、
子供ができてもいいと思えるほど、
彼のことを好きになっていた。
本当に浅はかだし、
今思えばぶん殴ってでも止めるだろう。
ただ、あの時のわたしには本当に彼が全てだった。

でもそんな溺れるような恋は一瞬で終わった、
ちゃーんとフラれた。

重かったんだよね、わたし、
そして彼を信じられなかったんだよなあ。
彼のことを好きな女の子と連絡取ってたり、
その子と他の男の3人で会ってたりして、
それがたまらなく嫌だった。
他にもそんなことが重なって、
嫌と言えばいうほど私たちの関係が良くない方向に向かっていくことはわかっていたのに、
言葉を止めることは出来なかった。


彼のことを好きになってからの自分が好きだったのに、
だんだんと嫌なやつになっていってしまっているのは
自分でも気が付いた。

そのあと、わたしはすぐに彼氏を作った。
彼を忘れたくて、新しい恋に逃げた。
一方、彼はその3ヶ月後くらいに彼女を作った。
とくに、何も思わなかった。

なぜなら別れた後も連絡を少し取ったから。
その連絡は付き合っていた時とは天と地の差があった。
当たり前だ、もう別れているんだから。
ただ、わたしは忘れられずにいた、
わたしのことを好きだった彼のことを。
過去の彼に、ずっとずっと恋をしていた。
過去の彼のことを、ずっとずっと、好きでいた。


誰と付き合っても、
あんなにドストレートに褒めてくれる人には出会えなかった。
自己肯定感をあげてくれる人に出会えなかった。
あの時のわたしは、わたしが1番大切で、
だからわたしよりもわたしを大切にしてくれる人に
出会いたかったんだと思う。

ひょんなことからまた、連絡を取ることになり、
友達としても気が合うようなわたしたちだったから、
また会うことになった。
この日、わたしたち2人は初めての浮気をした。
一度浮気をしてからは、
息をするように嘘をついて浮気を繰り返した。
お互いに、恋人とは別れた。
なのに、2人がもう一度付き合うことはなかった。


彼に会う時、
わたしのことを好きだった彼を思い浮かべていた。
あの時の幸せを、
もう一度味わいたいと思っている自分がいた。
その時点でもう、
気持ちはないんだとわたしは気付けなかった。
付き合おうって、言ってくれると思っていた。
でも、言ってくれない彼を見て、
もう恋人に戻ることはないんだなと、
その時にやっと確信した。
そこに至るまで半年以上かかった。


わたしはまた、彼氏を作ることにした。
彼と同じ方法で。
友達づてにカッコいいと言っているのを伝えてもらい、
連絡を取り、
自己肯定感の上がりそうな言葉をたくさん伝え、
結果付き合えることになった。
彼のことを忘れるために、
彼と同じ方法で恋人を作った。

それまでには色々あったりもして半年かかった。
半年間、彼にその人の相談を何度もした。
もしかしたら「俺にしとけよ」とか、
そんな漫画みたいな甘い言葉を言ってくれるかなと
少し期待した。
が、そんなことはなく、
ただしっかりと彼は相談に乗ってくれていた。

ただ、最後にわたしが 
「付き合えたからもう会わない」
と別れを告げると、彼は
「ゆぽに彼氏できたなら、俺も彼女つくるわ」
と言った。

ねえ、ずるいよ、そんな言葉を残すの。
わたしが彼氏を作らなかったら、
あなたは彼女を作らなかったの?
わたしとずっと、一緒にいてくれたの?
そんな言葉をグッと飲み込んだ。

言ったら、
また彼の手のひらで転がされているような気がして。

そしてその時に思ったんだ、
あんたのそのいいところ全部、
わたしが持っていけばさ、
わたしも「手放せなくなる女」に
なるんじゃないかってね。

それからわたしは良いなと思う人の良いところを、
全部わたしのものにして生きていくことにした。

あなたを好きになったことも、
別れたことも、
全部全部無駄になってなんかいないし、
むしろわたしの幸せのために活用させて
もらってるんだからな!!!!


大好きだったよ、
全てがどうでも良くなるくらい夢中になるくらい。
大好きだったよ、
君しか見えなくなってしまうくらいに。
大好きだよ、
幸せになろうね、お互い。


わたしを救ってくれてありがとう。
強く生きるよ。

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