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【JOCV】派遣前訓練Day21|書籍紹介「異文化理解力」

コミュニケーションに関して、外部講師による講義が行われた。講義中盤に「異文化」について言及があった。異文化コミュニケーションの権威であるミルトン・ベネットを引用し、自文化中心から相対主義へと移行することで異文化を受容し、異文化に適応できるようになると強調。

ベネットの主張に反論する気概も論拠も持ち合わせていない。しかしながら困ったことに、ベネットの主張に納得したところで、いざ異文化に直面した際に成す術が無いのである。

「傾聴」や「アクティブリスニング」、「相槌の方法」などのテクニックを紹介され、粘り強くコミュニケーションを取ることで異文化を理解できると諭されるのだが、正直なところ「努力は必ず報われるから頑張りなさい」以上のメッセージを受け取ることができなかったである。

ベネットの論文等を読んだことが無いので、ベネットが悪いのか、講義が悪かったのか判断はできない。おそらく私の不勉強のせいである。

ただ、あらゆる国と地域の人が協働する時代において、国と地域の文化に関する多くの情報が蓄積されていくはずである。アメリカ人の働き方やドイツ人の時間感覚はどのようなものか、日本人の価値観は世界から見てどのような位置にあるのか、予め知ることができれば、いざアメリカ人やドイツ人と仕事をする際にある程度の準備や覚悟ができそうだ。幸運なことに、そのような各国の文化の位置情報が入手可能な時代に生きている。ということで紹介する本がこちら。

異文化理解力|相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
エリン・メイヤー|2015年、英治出版

「異文化理解力」とは、相手の発言や行動の真意を理解すること。
ーそして、自分の言動を相手がどう捉えているかを理解すること。

「どう見えているか」ではなく、「どう見ているか」。ユクスキュル風に述べるのであれば、「私から見た世界」と「あなたから見た世界」は異なっているのである。

では「あなたから見た世界」を知りたいときにどうするか?講座で磨いたコミュニケーションスキルを使ってゼロから手探りで頑張るか?そもそも「私から見た世界」を自分自身で理解できているのだろうか?

「指標を上手に選ぶことで、国ごとにある程度の特徴が掴めるかもしれない」と仮説を立て、コツコツと調査した結果が本書には掲載されている。この本では8つの指標を設定している。

1. コミュニケーション(ローコンテクストかハイコンテクストか)
2. 評価(直接的か間接的か)
3. 説得(原理優先か応用優先か)
4. リード(平等主義か階層主義か)
5. 決断(合意志向かトップダウン式か)
6. 信頼(タスクベースか関係ベースか)
7. 見解の相違(対立型か対立回避型か)
8. スケジューリング(直線的な時間か柔軟な時間か)

この本の良いところは、これら8つの指標に基づいて各国の文化の位置を可視化している点である。この本の原題は「The Culture Map: Decoding How People Think, Lead, and Get Things Done Across Cultures」。著者は「Culture Map = 文化の地図」を見せようとしてくれているのだ。

掲載されている各国の文化の位置は統計値であり、国の中でも人によってばらつきがあることは言うまでもない。だが、訪ねたこともない国で明日から働くことになった際、「その国の文化がざっくりどの辺りに位置しているのか」を知っておくことは有益ではないだろうか。

本書で紹介されているのはいわゆる先進国のCulture Mapであり、青年海外協力隊が派遣される国は掲載が少ない。また、指標の設定がビジネス書を連想させるが、文字通りビジネス書なので仕方が無い。続報を期待する一方で、本書で紹介されている指標をもとに任国における人の働き方を観察することは有効ではないだろうか。

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