『五分後の世界』感想(2023/05/06)

ああ、これ知ってる。『ゼロの使い魔……

おススメされたので読んだ。

四宮さんからおすすめされて読んだ村上龍「五分後の世界」
人からおススメされないと読まないジャンルの本を読まなくなってしまった私にとって願ってもない機会でした。
逆張り精神が強すぎてビッグネームは避けて通るんですわ……。

初見の感想

「クリアな文章が読みたい」というリクエストに対して随分と血腥い小説を持ってきました、というのが一発目の感想。圧倒的で無駄のない戦闘描写は非常に読みやすく、展開に容赦はないものの先が気になり、不快な表現もまるでない。流血、損壊、癖としてもアリ。良い小説でした。
あと、これゼロの使い魔じゃん……と考えるとちょっと尻切れ蜻蛉感もありつつ。でもなかなか面白かったです。

解説を見ての感想

解説されてようやく言語化できることばかりです。
ただ、そのまま一度読んだ時の感覚も大切にしていたいので前段も記載しました。

ゼロの使い魔などにある、転生先の新たな集団への心理的帰属を心情や背景などの余分な描写抜きに表現するという目論見自体は非常に面白いですね。
このコンバット×コンバート(ハンバートハンバートではない)のコンセプトは村上龍さんの圧倒的筆力によってのみ成しうるものなのかもしれません。
エンターテインメント小説としての面白さは勿論、こういったテーマ性も非常に私にとって愉快なものでした。

アンダーグラウンドを用いた現代社会批判という側面ははあまりピンとこなかったです。また、五分前の世界もアンダーグラウンドも同じ日本ということから、読者の中にあるナショナリズムが帰属の心理に影響しており、コンバット×コンバートのコンセプトはある程度純粋ではなくなってしまったのではないかと感じています。

高いエンターテイメント性を持ちながらも、文章に全く無駄のないという意味でのクリアさが楽しめる傑作でした。文中や目論見の遊びを楽しむことが好きな私ですが、こういった良い文章を噛み締める。いや、あまりに読みやすくするするとした喉越しを楽しめるのも趣がありました。

良かったです。
続編もあるということで、見つけたらまた読んでみたいと思います。
今回はおススメしてくださってありがとうございます。

ramhome

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