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司法試験過去問との向き合い方Ⅰ

お久しぶりです。ちょま林です。
noteに記事を執筆するのは久しぶり、あまりに久しぶりすぎてお作法すら忘れる始末。全然ダメ。
というのも、書くべき記事のネタがなかなか思い浮かばなかったというのが1点、修習も始まり少しばかし忙しかったのが1点(お祝いの会食攻勢で私の体重が日に日に……)。

そんな中、遂に司法試験の採点実感が公表されました(遅い)(司法試験委員たちの魂の叫び?がつまった大作です)。採点実感はめちゃめちゃ長い文章ですが、非常に役立つお得情報が満載です。ゲームでいうラスボスを倒す最強装備の作り方が分かっちゃう設計図なんです。
これは、実感含め”司法試験”にだけフォーカスした記事を執筆しなければと思いました。そういう訳で、何度かか言及してきたことですが、司法試験の過去問、出題趣旨、採点実感との向き合い方にスポットを当てた記事を書いておきます。

例のごとく、本記事はちょま林の主観によるものであり、その内容の正確性等を担保するものではありませんので、ご了承下さい。

司法試験過去問

さて、司法試験という試験制度自体すでに現行のものが始まってから17年分の蓄積があります。
各過去問、試験委員会が丹精をこめて作り上げた問題です。
もちろん、年度が古いものは今と形式が大きく異なっていたり、様々な事情で事務処理型に大きく舵を切った年の物があったり(いわゆるブルー卿事件関係)はしますが、問われる中身の部分、条文や問題意識、論点などには大きな変化はないです。

そのため、過去問はできる限り多くの年度を解くべきです

また、単純に同内容あるいは似たような内容が出題される可能性があることからも過去問は重要です。

よく、憲法や行政法、刑訴法に関しては過去問が一番重要だと言われています。しかし、これにとどまらず、刑法や民訴法、会社法についても過去問の重要性はかなり高いと思います。以下では、それについてざっと簡単にまとめていきます。

憲法

まず、三者間や法律意見書形式、二者間の答案の書き方を学ぶためには過去問を用いることが有用です。
次に、違憲審査基準の適用の仕方を学ぶ上では、令和元年、2年等の問題がオーソドックスな違憲審査の枠組みを問うているので、ここから過去問演習を始めて、まずは、違憲審査基準がどういうものか把握することがおススメです。
さらに、毎回問題は異なりますが、同じ問題意識が聞かれることがあります。例えば、大学の自治と学問の自由の対立や表現の自由とプライバシー権の対立、団体の内部統制に関する考え方と人権そのものの対立などたくさんあります。
基本的に現行の司法試験、予備試験ならば憲法はある程度知識を身に着けたら過去問を解くのが最も早い論文対策になると思います。

行政法

行政法の司法試験における三大出題分野は処分性、原告適格、行政裁量です。これらについてはあえて言及するまでもなく多くの方がご存じだと思います。
三大出題分野についての基本的な内容はほぼ出題されつくしていますし、裁量のパターンも過去問で網羅されているので、これらについては基本書や簡単な演習書をやったら過去問を回すのが一番身につくかなと思います。
また、過去問では、行政手続の瑕疵や訴えの利益、違法性の承継等の他頻出分野も一通り学習することができます。また、本案上の主張を考える際でも、制度そのものや趣旨から思考を出発させることを過去問ではしっかりと学べると思います。

刑法

あんまり過去問の重要性が語られない刑法ですが、ここ最近の問題はほとんど出題論点や問題意識レベルで平成20年代前半や平成19年の問題の焼き直しです。また、刑法総論、各論で重要な共犯分野や財産犯分野については既に一通り出題されていることから過去問レベルのことは書けないと相対評価で沈みかねません。
さらに、近年は、学説対立や今までとは聞き方の角度の違う出題も多くなされているので、過去問対策は必須だと言えます。

刑訴法

いうまでもなく過去問ゲーです。
そもそも、論点数がそこまで多くはない刑訴は捜査分野も証拠分野も公判分野も既に大体の重要論点が出題済みで予備試験も含めれば数回繰り返して出題される領域に突入しています。
過去問を回して習得すべきは論点単位の細かい論じる順番や規範の射程の正確性、事実認定(当てはめ)の丁寧さやその表現方法や文言といった細かい部分です。そこが、最後に評価を分けるポイントになるからです。
また、よく出る論点の当てはめの表現は覚えきってしまっていいと思います。ある程度パターン化できる当てはめがほとんどです。

民法

ほぼ、過去問と同内容が出題されることはないですが、ここ数年は改正債権法が絶対問われる関係で予備試験の過去問も含め過去問の有効性はありました。ただ、今後どうなるか分からないので、民法に関しては他の科目より過去問の重要性は落ちます。

商法

商法も過去問の重要性はあまり指摘されませんが、過去問では出題される問題の形態がだいたい決まっています。また、同内容は出ませんが、出題し得る論点数が多くはないので、同じ条文の同じ論点が形を変えて出題されることが多々あります。過去問を解いておくとある程度出題の分野が掴めます。
423条や429条絡みの問題では、取締役の負う「任務(職務)」の具体的な認定が必要になりますし、因果関係や損害論においても問題文の事情を使用して具体的に当てはめる必要があります。当てはめ方は類型化してパターン化できるのでここも事前に準備できます。
831条絡みも重要ですし、会社再編や株式発行に関する事前(差止)、事後(無効等)の手段も頻繁に問われます。
一度、過去問をやって問われ方や法的構成の仕方、要件の認定の仕方を準備しておくと楽に本番でこなせます。

民訴法

民訴法もかなり過去問が重要な分野だと思います。
頻繁に問われる弁論主義、裁判上の自白、既判力、複雑訴訟については過去問を仕上げておく必要があります。
弁論主義や裁判上の自白、複雑訴訟は全く同じ論点が同じ問われ方で再度出題されることも頻繁にあり、こういったことは過去問を昔の物からしっかりやっておくことで把握することができます。
年度によっては、民法との複合問題や和解だけを書かせる年もあり難しい問題もありますが、一般に予備校が公開しているランク表を使用して、メリハリをつけてやっておくべきです。

こういった、各過去問の再度の出題可能性という観点や答案の書き方、構成の仕方を学ぶという観点からも

過去問はできる限り多くの年度を解くべきです

幸いなことに、各過去問のランク付け、司法試験の頻出論点表の一覧を加藤ゼミナールの加藤先生が無料でまとめてくださっているので、これを活用することでメリハリづけをして過去問を消化することができると思います。
以下に、リンクを張らせていただくのでご活用ください(なお、広告宣伝ではない)。
次回は、出題趣旨、採点実感の利用法を書いていこうと思います。
お楽しみに。


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