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半年で100名以上のクリエイティブ職を選考した採用面接官が見たポートフォリオについての考察

約1年ぶりの投稿となります。ラクスのクリエイティブチームで採用/1次面接を担当※しているタニナカです。
昨年度は大変ありがたいことに106名の方からご応募いただき、その中から42名の一次面接を実施させていただきました。厳正なる選考の結果、最終的にはデザイナー3名、ディレクター2名が入社しました。この採用過程を通じて多くのポートフォリオを拝見しましたので、その考察をまとめてみようと思います。

※クリエイティブチームでは、書類選考と1次面接を同じ担当者が行いますので、この記事では「採用面接官」と記載します。書類選考と1次面接に関わる現場の担当者視点だとご理解いただければ幸いです。

ちなみに、ラクスのクリエイティブチームはコミュニケーションデザイン領域のポジションです。詳しくは、こちらのWebデザイナーの採用情報をご覧ください。


クリエイティブ職のポートフォリオとは?

参考までに「マイナビ転職」のサイトには次のように記載されています。

クリエイターの成果物をまとめた作品集を指します。いわばクリエイターの作品の履歴書。

ポートフォリオの作り方。必須項目と転職・面接で差がつく応用テクニック/マイナビ転職

ラクスでは応募時の書類をしっかり確認し、組織やそのポジションにマッチするかどうかを選考しています。もちろん、クリエイティブ職であればポートフォリオも同様ですし、場合によっては履歴書以上に重要な場合もあります。クリエイティブチームの選考では、職務経歴書のみではデザインスキルの判断が難しいため、応募時にはポートフォリオをご提示いただくようにお願いしています。

多くのポートフォリオを見ていると、いくつかの傾向が見受けられます。そこで今回は、ポートフォリオの傾向と、私が「良いと思えるポートフォリオ」の観点をまとめてみようと思います。

ポートフォリオの傾向

私が選考を行った中で感じたポートフォリオの傾向について、割合の多い順に記載します。

・情報が足りない

そのまま文字通りなのですが、ポートフォリオの作品欄にスクリーンショットとURLなど限られた情報のみ掲載しているようなパターンです。多くの企業では、周りのメンバーと一緒にデザイン業務を行っており、ディレクション/デザイン/マークアップ/エンジニアリングなどのどの工程を担当したかが分かりません。その方がどのようなクリエイティブにどのように関わったか、工程を記載いただけると分かりやすいです。

また、デザインの意図やアウトプットの目的も記載されていると、その制作物のデザインが目的達成に繋がったものであるか、という観点でレビューができます。デザインやクリエイティブは審美性が高くても、目的に即していないと機能しないからです。例えばサイトリニューアルであれば、なぜリニューアルをしたのか、リニューアル前の課題は何だったのかが分かるだけでも、デザインの意図が伝わりやすいです。

・独自の世界観を演出?

ミニマリズムを追求しすぎて文字が読みにくいデザインや、写真と文字をただ順番に並べただけで、ぶっきらぼうに感じるデザインをたまに見かけます。あくまでポートフォリオ自体でもデザインのスキルや判断力を見ていますので、そのデザインが良くないと実務でも良いアウトプットができないのでは?と判断してしまいます。
また、デザイナーご自身の好みを主張するデザインは個人的に好きですし、情報設計さえできていれば良いと思います。(後述します)
ただ、悪目立ちするのであれば、コンサバなデザインの方が転職時に汎用性が高いとも思います。

・情報が多すぎる

バナーのデザイン実績でも、手書きのラフから記載してくれる丁寧なパターンがあります。情報が少ないよりは多い方が良いのですが、あらゆる情報が掲載されていると、ポートフォリオの情報が整理されていないと感じることがあります。
そのような場合に限って、どの領域を担当したかなどの重要な情報が記載されていないこともありますので、読み手(ターゲット)に何(どういった情報)を伝えるべきかという観点を持っておくことが大切です。

ポートフォリオの目的と採用面接官目線でのニーズ

次に、ポートフォリオを作る目的と採用面接官が見るポイントをまとめてみます。あくまでも求職者と採用面接官で目線が合っているかどうかが重要だと思います。
ちなみに、私自身も転職時にポートフォリオを準備したことがありますが、今振り返ると、ターゲットである採用面接官のニーズや目的に沿ったものではありませんでした。ポートフォリオの目的と内容が合っていなかったことに、採用面接官になって初めて気付きました。

・制作スキルのアピール/判断

普段から自身のキャリアプランを明確にし、ポートフォリオを更新している方以外は、ほとんどの方が転職用に準備していると思います。その場合、制作実績を掲載して自身のスキルをアピールすることが目的だと思いますし、採用面接官もその観点で見ています。

・職務経歴書だけで伝わらない人柄や志向性

制作実績以外にも、例えば趣味や好きなこと、仕事以外で大事にしている価値観などが掲載されていることもあります。採用面接官目線では「うちの〇〇さんと話が合いそうだな」などと、社内メンバーと上手くやっていけそうかという観点で見ています。恐らく多くの採用面接官は、制作スキル面以外にも人柄や志向性などカルチャーフィットの観点でも選考しています。

・「デザインの役割」を理解しているか

これは主に採用面接官のニーズに関わることですが、求職者も意識していることが多いかと思います。先ほどの情報過多の話にも通じますが、ポートフォリオは転職ツールとしての機能を持っています。そのため、目的に沿ったデザインになっているか、必要な情報が適切に伝えられているかを理解することが重要です。特にラクスでは、デザインを「問題解決のための手段」と考えることを意識しています。求職者がこうした考え方をポートフォリオに反映させていると、採用面接官も目線が合うと感じることが多いです。極端に言えば、この考え方や志向性が違っていると、社内文化に適応するのが難しくなる可能性もあります。

(私が思う)良いポートフォリオとは?

転職や採用の観点で、マッチングに重要な情報が掲載されているものが良いポートフォリオだと思っています。必要な情報が掲載されてないために評価が低くなってしまうのはもったいないですし、ポートフォリオで良く見せようとしても面接で見抜かれ、万が一入社してもその後に困ることになるのは双方だと思います。では具体的に良いポートフォリオの要素を紹介いたします。

1.担当した制作物の詳細が記載されている

極論ですが、これさえできていれば多くの場合、ポートフォリオは十分な役割を果たしていると思います。どのようなプロジェクトで何を担当し、どのようなクリエイティブを作ったのかが重要です。例えば、以下のような項目があると分かりやすいと感じます。

・制作物のビジュアル(キャプチャなど一目でわかるもの)
Webサイトの場合はURLがあるとさらに良いですが、常時更新されている可能性が高く、制作時のものを掲載いただけると良いと思います。

・担当業務(全て担当した場合もその旨を記載)
例えばワイヤーフレームを元にトップページのデザインを制作したとか、コーディングも担当しているとか、どこまで担当したかが分からないとスキルのチェックが難しいと感じます。

・制作目的/意図
特にデザイン面では、このデザインが良いのかどうかは目的に沿えているかが重要になります。例えばターゲットが書かれていれば想像しやすいですし、デザインは見た目の好き嫌いではなく、意図したものなのかという観点を重要視しています。

・プロジェクト規模(人数や期間)
上記の担当業務にも関わりますが、どれくらいの規模感でお仕事をしていたのか、人数や期間がわかればある程度イメージが湧きやすいです。

・上手くいった/いかなかった箇所
制作する上での試行錯誤や考え方を記載いただけると、アウトプットの精度とプロセスの両面で評価できると思います。

2.個人の趣味/趣向が表現されている

履歴書や職務経歴書は堅い文章になりがちですが、ポートフォリオだけは自由に表現できます。人柄や価値観なども選考には重要な要素となり、面接時にもキャッチアップすることがあります。「ピンクが好きだから全面ピンク」といったデザインでも、掲載内容が適切であれば問題ありません。

また、「デザイナーだけど写真にも興味がある」や「コーディングが得意だけどイラストも描ける」など、クリエイティブに関わる趣味や興味も選考の加点要素となるので、十分にアピールすることが大切です。

3.ポートフォリオ自体のデザインの質が高い

作り込まれた複雑なデザインやJavaScriptのアニメーションを多用すればよいというわけではありません。重要なのは、わかりやすくターゲット(採用面接官)に情報を伝えるという観点でデザインされているかどうかです。制作物の質が高い方は、ポートフォリオの質も高いと感じることが多いです。シンプルでも情報を伝えるという観点でデザインされているかが重要です。

※逆に不要だと思うもの

特にデザイナー歴の浅い方に多い傾向ですが、5段階評価や経験年数でアプリやスキルの習熟度を表現した以下のようなスキルマップは不要だと思います。
Photoshop:★★★★☆
html5:★★★☆☆
JavaScript:実務で3年(主にjQueryの改修)

理由としては、星の基準が属人的で曖昧であること、経験年数がスキルと比例しないこと、そしてPhotoshopなどのアプリを上手く使えるからといってデザインが得意とは限らないからです。


以上、ポートフォリオについての個人的な見解をまとめてみました。記載した内容で書類選考の通過率が確実に上がるというわけではありませんが、転職希望者と採用面接官のマッチング観点で齟齬が起きづらいのではないかと考えています。
また、転職は人生の大きな転機であると考えています。そのため、重要な選考判断となるポートフォリオをデザイナー的思考で活用する機会となれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします!

クリエイティブチームでは絶賛新しいメンバーを募集中です。カジュアル面談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。ポートフォリオのお悩み相談もお受けいたします。


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