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落語ラン vol.33 「花見の仇討ちラン」

銭湯で上野の花の噂かな(子規)。
上野のお山の中に「正岡子規記念球場」がありますが、実際に正岡子規は頻繁に上野で野球を楽しんでいたようですね。
江戸時代、花見の名所と言えば上野、浅草、飛鳥山といったところだと思いますが、上野は家光公が、飛鳥山は吉宗公が庶民のために桜を植えたと言われています。「花見の仇討ち」は上野バージョンと飛鳥山バージョンの両方がありますが、上野は江戸時代歌舞音曲が禁止されていたようなので、飛鳥山バージョンは江戸時代の頃のお話、上野バージョンは明治以降になって改変されたバージョンではないかと思っています。
飛鳥山と言えば、今話題の渋沢栄一公の王子製紙の地でもあり、晩年を過ごした地でもありますが、従兄の成一郎さんが主導的な役割を果たした彰義隊が上野の地で最期を遂げたのも興味深いところです。

あらすじ

長屋の四人組。今年こそは花見の趣向で江戸中の話題をかっさらいたいと、仇討ちの芝居を企てる。その段取りはこうだ。上野の【摺鉢山】で仇役の金さんが煙草を吸っているところに巡礼兄弟の二人が名乗りを上げ、仇討ちの立ち回りに、周りに人垣が出来て大騒動になったところに六十六部のいで立ちの六さんが現れ、止めに入る。周囲が注目しているところに酒、肴、三味線、太鼓で総踊り、という趣向だ。一同早速稽古をして準備万端。翌日、六十六部役の六さんが上野に向かっていると、耳の遠い【本所】のおじさんに見つかり、家に連れていかれてしまう。一方、巡礼兄弟役の二人も上野のお山に向かうが、途中でひょんなことから侍につかまり、仇討ちに向かう途中だと説明してようやく解放される。摺鉢山で一同を待っている仇役の金さんは朝から煙草を吸い過ぎて目が回りそう。そこへ遠くから巡礼兄弟がようやく現れ、「仇討ちだー!」と摺鉢山は黒山の人だかりになるが…。

ランニングコース

上野公園→本所

摺鉢山

「花見の仇討ち」はもちろん花見の季節の噺ですので、年中聞ける噺ではありません。それだけ、初めて聴いた時にはいくつか良く分からない点がありました。まず、六さんが演じるはずだった「六十六部」。何となくお遍路さんみたいなものかな?と想像が付きますが、その具体的ないで立ちなどがイメージ出来ません。ところが、「三越前」駅の銀座線と半蔵門線の乗り換えコンコースに「熈代勝覧」という絵巻物があり、江戸時代の事物が活き活きと描かれているのですが、その中に六十六部の姿も描かれています。なるほど、六十六部というのは法華経を66回写経して66か所の霊場に納めることをやっていたそうなので、背負い物は結構大きいです。その分、お酒や肴、三味線も格納出来たでしょうね。

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六十六部(出所:熈代勝覧)

出所:熈代勝覧


次に初めて聴いた時に分からなかったのが、仇役の金さんを巡礼兄弟が見つけた時に「モウキノフボクウドンゲノ花待ち出でたる今日只今、いざ尋常に勝負!」というセリフをぶつけます。「モウキノフボク」は何となく「盲亀の浮木」かな?と想像が付き、なかなかたどり着かないことだろうなと想像出来ますが、「ウドンゲの花」が分かりません。調べると「優曇華の花」であって三千年に一度咲くようです(いずれにしても、めったにない大チャンス、の意味)。「摺鉢山」は上野公園の中にある古墳であって、登ってみるとなんてことはないサイズ感ですが、ここに野次馬連中が押し寄せたのですから、さぞかし賑やかだったことでしょう。

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摺鉢山に登るとこのくらいの広さです

本所

落語には時々「本所のおじさん」が出てきます。本所というのは、割と広い範囲だったはずですが、今回は「すみだ北斎美術館」辺りを目指しました。すみだ北斎美術館の向かいには反射炉で有名な江川太郎左衛門の旧宅跡があります。

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すみだ北斎美術館周辺


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