見出し画像

奈良・慈光院=奈良盆地を一望する境内は、茶人の楽園?!

 うぶすなの里に荷物を置いて、真っ先に向かったのが、法隆寺と大和郡山のちょうど中間地点くらい、小泉というエリアにある臨済宗大徳寺派の慈光院。こちらの寺院、若草山をも遠くに臨み広く奈良盆地を一望できる、とても眺望の良い庭があって、奈良でも有数の気持ちの良い空間だと思います。写真の真ん中くらい、山のあたりに若草山が見えるのがおわかりいただけますでしょうか?

慈光院へのアプローチ

ごくありふれた農村地帯の風景の中にある、ちょっとした林の丘陵地の坂を上がっていくと、上写真のような日常と隔てるような美しいアプローチ。

慈光院・茨木門

そして、そのアプローチの奥には、お寺にしては少し異色の立派な楼門が待ち受けています。その名は茨木門。それというのも、大阪の茨木城の城門を移築したものらしいので、納得です。そして、茨木城と小泉ということで、察しの良い城郭・歴史マニアの皆様ならお気づきのことと思いますが、慈光院はかつて茨木城主で、小泉藩主であった片桐氏の菩提寺なのです。

茨木門から書院へのアプローチ

豊臣氏滅亡のエピソードの時に必ず登場する片桐且元の弟で、小泉藩の藩祖=貞隆の菩提を弔うために、二代藩主の貞昌(片桐石州)が建立したのが、慈光院なのです。片桐石州は、家光に命じられて将軍家の茶道具を整理したり、四代家綱の茶道指南をしたりと、石州流茶道の開祖としても知られる茶人。小堀遠州と同じく、知恩院の普請奉行や名古屋城の二の丸庭園の作庭や仙洞御所の修復など、普請や作庭に活躍した能吏だったようで、慈光院にはそんな石州の魂がいまだ生きているように感じます。

書院玄関から見たい茨木門
書院から雄大な奈良盆地を一望する
書院の前庭と大刈込
重要文化財・茶席=高林庵

書院の北東角にある茶室・高林庵は、石州が手掛けた茶席で、重要文化財。全国に現存している茶室の中で、時代・作者・形状等が証明できるものの中では最古の席と言われているそうです。

本堂

書院の裏手というべきなのか、奥の方に本堂が配置されており、この独特の伽藍配置も含めて、石州の思想性が込められた茶人の空間美が350年の時を超えて広がっていることに感激しました。茶人石州の楽園が、ひっそりとここにあることにいつも心躍ります。
 書院でご馳走になるお茶菓子は、奈良で唯一の落雁専門の和菓子屋=御菓子司丹波屋善康で、片桐家の家紋を入れて作られている特製の落雁です。落雁の下に餡があるのが、しっとりとした食感でおいしい落雁でした。

お茶と一緒にいただける茶菓子も特製

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?